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Facebook「リブラ」登場は必然? — 久しぶりに海外送金を体験してその不便さに唖然

韓国企業へのCD音源提供への対価(アドバンス分)として一定額の送金を受領した。受け取りプロセスがとても面倒だった。10年前、Appleからアプリの売上金を「被仕向送金」として受け取ったときの記憶から、お手軽感覚でいたので、最近の海外送金事情を目の当たりにして驚いたと同時に、ビットコインやリブラ(Libra)といった仮想通貨(暗号資産)の必要性が求められる事情が理解できた。

韓国側から、「送ったよー」と送金書類のPDFがメールで届いたのが、金曜日。週明け火曜日(月曜日が休日だった)の午前中に韓国ルーツの銀行の日本支店に電話して送金の事実を確かめたら、「電信送金を確かに受信している。横浜銀行には今朝、9時11分に送信済み」との返答。

そこで横浜銀行に「いつ口座に入金されるのか?」と電話で確認したら、海外送金は、諸々手続きがあるので約1周間必要との回答。さらに「入金について明確な日時をお答えできない」とのこと。このとき、行内では紙の書類が行き交う様を想像して、レガシーな金融機関らしいなあ、と思った。

で、結局、横浜銀行から電話があったのは、木曜日の午前9時30分。ただ、このときは外出しており、留守録で夜それを知った。翌、金曜日の朝、横浜銀行に電話したら「ご来店いたただき次の手続きが必要」と言われた。

(1)法人マイナンバーの登録書類の作成
(2)法人の存在証明として全部事項証明または、国税の納付証書
(3)今回の取引の内容がわかるなんらかの書類(先方との契約書を持参)

10年前にAppleのドイツ銀行ルクセンブル支店から横浜銀行の弊社口座に送金があった際には、銀行からの「被仕向送金手数料3000円を引いて入金しますので、よろしくお願いします」的な電話一本ですぐに口座に入金されたので、今回指定されたあまりのめんどくさい手続きに愕然としたわけだ。そもそも、窓口に出向かなければならないという点で萎える。

ここまで面倒な事務が必要になったのは、資金洗浄やテロ資金など、主に不正送金対策なので致し方ないのだろう。今回の窓口担当者に確認したら、規制当局の締め付けは「年々厳しくなっています」と顔を曇らせた。上記書類の(1)(2)は、今回手続きすれば以後、不要になるのだが、(3)取引内容に関する書類は、送金事案が発生する都度提出が必要とのことだ。

例えば、今回の音源提供契約は、初回アドバンスに続き、四半期ごとに先方からロイヤリティが振り込まれる条件(CDが売れればの話だけど…)なのだが、「その度に今回のような窓口での確認作業が必要なのか」との問いに、少し悩んだ銀行担当者は、「この契約案件については、以後四半期ごとの手続きを不要にするためには、契約条項を確認させてもらいます」という。その上で、契約書の「四半期」条項が記載してある場所を示せ、と迫ってきた。その部分を示してやったら、その条項を目視で確認した上で、「わかりました。これでけっこうです」という念の入れよう。当局からの厳格化圧力が強いのだろうか…。

ただ、たとえ同じ取引相手であっても、別の音源の契約案件が発生したら、都度、契約書の確認が必要だということは変わりない。さすがにその都度、窓口に出向くのは非効率的なので、「今後は、PDFをメールで送るからそれで判断できないのか」というと、それはOKとのことだった。

既存の金融システムを利用した海外送金がこんなにまで時間と手間がかかるのだから、仮想通貨を利用した手軽な送金手段が切望されるのは当然のような気がする。逆にいうと、国際送金が手軽にばればなるほど、Facebookがぶち上げた「リブラ」について、各国当局が、不正送金への懸念を示すのもある程度理解はできる。ただ、仮想通貨にまで、今回のような送金内容の確認についての厳格化を求めたら、手軽に低コストで授受できるというメリットは、失われてしまうのではないのか。

Facebookのリブラ担当幹部であるデビッド・マーカス氏は、米国議会の公聴会において「各国当局の承認を得るまでは発行しない」といった趣旨の発言をしたというが、仮に送金事案について今回のような人手による確認作業を行っていたのでは、リブラそのものの存在価値を否定してしまうことになる。

余談だが、10年前Appleからアプリの売上を受け取ったときのお話の続き。当時は、ドイツ銀行ルクセンブルグ支店からの海外送金扱いだったので、たかだか、毎月2万円程度の入金のたびに3000円を取られるのは馬鹿らしいので、当時、慌ててシティバンクに個人でドル預金口座を開設した記憶がある。

その後、Apple側がドイツ銀行の日本の支店からの国内送金に変えたので、現状のアプリの支払いは、普通の国内送金扱い。弊社の受け取り口座も横浜銀行に戻した。「被仕向送金」を取られることはない。


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