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【証券訴訟1】株式投資の損失を裁判で回復する方法

この記事のサマリー

この記事では、裁判で株式投資の損失回復を図る方法をご紹介します。

・上場企業の不祥事で、株価が下落した場合、株主はその企業に対して裁判で損失額を請求し、取り返すことが可能
・株式を処分した株主でも、継続保有している株主でも、裁判は可能
・複数の株主が集まって、集団訴訟を起こすことで、低コスト・低負担で裁判に参加可能

株式投資はすべて自己責任?証券訴訟とは?

株式投資は当然株価の下落リスクを抱えます。一般的に、投資リスクはすべて投資家の自己責任と考えられているため、投資家が保有している銘柄の株価が急落してしまった場合、その損失はすべて投資家が負担しているのが現状です。

一方で、上場企業は投資家に対して、有価証券報告書などの開示資料を通じて説明責任を負っています。仮に、開示資料の中に虚偽や不十分な記載があり、それが原因で株価が急落した場合には、投資家の損失は虚偽記載をした上場企業が負担するのが本来あるべき姿といえます。

そこで、金融商品取引法では、一定の条件を満たせば、裁判を通じて虚偽記載等により下落した金額額を、投資家が上場会社に請求することを可能にしています。以下、この裁判を「証券訴訟」と呼びます。

証券訴訟を起こすことができる条件とは?

金融商品取引法では、上場企業が開示資料に虚偽の記載をした場合、または重要な事実を記載しなかった場合、これらの虚偽記載発覚によって、株価下落の損失を被った投資家は上場企業に対して損害賠償請求が可能と定めています(金融商品取引法21条の2)

証券訴訟を起こすための主な条件は以下のとおりです

①企業の虚偽記載が発覚した時点で、当該企業の株式を保有していること
②虚偽記載発覚後に株式を処分していても、継続保有していても裁判は可能
③株式の取得価格が、下落後の株価を上回っていること

具体例を用いてご説明します。まずは以下が前提となる事実です。

・上場企業A社は、業績好調で過去数年間増収増益を達成
・A社の株価は2020年1月から12月末までの間は平均2000円を維持
・2021年1月1日、A社は過去5年間、架空取引により売上の半分を水増ししていたことが発覚。架空取引の発覚後、A社の株価は1000円まで下落した
・株主Bは、A社の株式を、2020年4月に1株2000円で1000株購入(計200万円)。架空取引の発覚後すぐに全株売却したが、売却時の株価は1株1000円で、100万円の損失が確定した

上記の①から③の条件に当てはめてみます。

株主Bは、虚偽記載が発覚した2021年1月1日時点で1000株を保有しており、①企業の虚偽記載が発覚した時点で、当該企業の株式を保有していることを満たしています

また、②虚偽記載発覚後に株式を処分していても、継続保有していても裁判は可能であるため株式を既に処分したBも裁判は可能です。仮にBが塩漬けして株式を持ち続けていても裁判は可能です。

Bの取得価格は2000円で、下落後の株価は1000円です。③株式の取得価格が、下落後の株価を上回っているため、Bは証券訴訟を起こして、A社に対して損失額100万円の損害賠償請求が可能です。

それでは100万円の請求金額のうち、実際に何割が返ってくるのでしょうか。こちらは裁判所の判断によりますが、過去の裁判の例だと9割程度の金額が返金されている事例があり、上記の例でも同程度の金額を勝ち取れる可能性があります。

過去の証券訴訟裁判例の詳細は、後日別記事にて掲載します。

証券訴訟を起こすための費用・手間は?集団訴訟で低コスト・低負担で裁判に参加

株式投資の損失を裁判で取り返せることを知ったとしても「裁判はお金がって手続きが大変」というイメージをお持ちの方が多いと思われます。

実際、普通の民事裁判を弁護士に依頼した場合、初期費用として数十万円程度が発生し、成功報酬として実際に裁判で買った金額から数割を支払います。また、証拠を集めたり、裁判所に行ったりしなければいけない可能性もあり手間も相応に発生します。

一方で、証券訴訟においては、集団訴訟という方法を取ることで、低コスト・低負担で裁判に参加して損失を取り返すことが可能です。

集団訴訟とは、大まかにいうと、共通の利害関係を持つ複数の原告が、同時に被告を訴える訴訟です。証券訴訟では、複数の株主が集まって、虚偽記載をして株価を下落させた企業を訴えることになります。

複数の株主が同じ弁護士事務所に裁判を依頼するので、弁護士費用を折半することができ、特に初期費用はほぼゼロ円で依頼することも場合によっては可能です(低コスト)。また、証券訴訟の場合は、株式の取引履歴を提出してもらえれば、弁護士事務所は裁判所に来てもらう必要はほぼありません(低負担)。

集団訴訟の参加方法や留意点などより詳細は後日別記事にて掲載します。

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