店長と私 #07 眠り姫

その日、私とシフトに入っていたのはtheお母さんキャラのおばさんだった。私が1を聞いたら100で答えてくる。その割に肝心なことがよくわからない。とにかく常にどこか的を得ていない。典型的な「優しい近所のおばちゃん」である。高校の国語の先生に声が似ている。この人がまた、小さなことにうるさい。例えば事務所に椅子が三つあるのだが、そのうちの二つはオーナーや偉い人が座る椅子だから座ってはダメだとか、なんかそういうことだ。つまり、1人が椅子に座っていたら私はたとえ休憩時間でも立っていなければならない。実に非合理的でくだらないルールだ。いきなりうんざりしたが、それ以外は特に問題がなかった。あーさんよりフレンドリーな性格だが、目の奥はいつも笑っていなくて怖い。私の中で登場人物が1人増えた。なんと呼べばいいかわからないので、適当にショウさんと呼ぶことにする。
ショウさんと業務をしていると、オーナーに呼び出された。今度は何をやらかしてしまったのかとビクビクして事務所に行くと、名札が完成したとのことだった。
よかった、これで少なくとも新人感は少しなくなる。
オーナーは一言
「寝てるな」
と言った。

わかってる。私の目がお世辞にも大きくないことは分かってる。でも寝てるって言い草はないだろう。

本当に「寝ていた」

こんなにぼやかしても尚寝ているのがわかる。
なぜこれで良いと思って名札を作ってしまったのか甚だ疑問である。これで客の前に立たなければならないかと思うと本当に叫びたくなった。

目にハートのシールを貼ったりしても怒られないだろうか。
もしそれはなんだと怒られたら、それこそ恥ずかしすぎて出勤できないのでギリギリのラインで思いとどまっている。

(続く)

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