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イノベーションってなんだ(1)

ソーシャル・イノベーションを題材にした卒業論文を書いた。2000年代中盤は、イノベーション、という言葉が今ほどは日常にあふれる言葉ではなかったように思う。ビジネスモデル、デザインといった言葉もそうだ。ITやSNSが非常に話題だったように思う。ソーシャルだって、社会的なという意味とSNSのソーシャルと意味が〈自分のなかで)ごっちゃになっていたころだ。


何が言いたいかというと、自分としては、「ソーシャル・イノベーション」という先があるのかもわからない非常にマイナーな研究をしていたつもりだったのだ。案の定、教授からは首を傾げられ、発表でも誰からも質疑応答がなかったように思う。ただ、社会起業家という存在には憧れを抱いており、そんな仕事がしたいなと思っていた(そして、その後することになる)。その行動原理を読み解くことが論文の主題で、社会起業家はどのようにして、ソーシャル・イノベーションを発生させていくのかをまとめた。論文とはいいつつも、大した考察も調査もできていない、今を思えば、高校生の調べ学習を長いページにしたレベルだ。

この当時から、イノベーションという言葉が解せなかった。シュンペーターなどを読み、その言葉の定義は理解していたが、非常にまどろっこしいもので、読めば当たり前じゃないかと思う内容だ。イノベーションかどうかをそれが生まれる前に判断できることが重要なのに、生まれたイノベーションの定義をされても、実務上は役にたたないよなー、と感じていた。その後も、いくつか本を読んだり、セミナーに出たりしたが、パッとしたものに出会うことはなかった。自分としても、なんとなく「イノベーション」という言葉を振り回していたが、納得のいかないままだった。

で、である。あるとき、出会ったのである。起こった後に「イノベーションだったよねー」というたぐいではなく、イノベーションが産まれるか産まれないかの渦中にあるときに判断できる定義にだ。

1.見たこと、聞いたことがない
2.実行可能である
3.議論を生む

この3つの要件が揃っていることである。もちろん、揃っていたからといってすべてがイノベーションになるわけではないし、世に出るかどうかはまた別の要素がある。ただ、イノベーションが生まれるときには、この3つの要件が満たされていることが多いということだ。

2012年、知人からの海外からの突然の電話で、この考え方に出会った。日暮里駅南口の陸橋を秋雨に打たれながら、歩いていたときのことである。


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