子どもを性犯罪から守るための法律づくりに力を貸してください
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子どもを性犯罪から守るための法律づくりに力を貸してください

菅野志桜里

~日本版DBSの提案~ 

 私は検事のとき、子どもをターゲットにした保育教育現場での性犯罪の録画画像をいくつも見てきました。被害にあった子どもの話を聞き、被疑者を取り調べ、証拠を集め、犯人を起訴し、裁判にかけ、有罪判決をとって、刑務所に入れる。似たような事件をいくつもいくつも扱いました。同じ犯人が同じような犯罪で戻ってくることもありました。自分が被害を受けていることすら知らない子どもがいましたし、自分の方が悪いことをしているのではないかと罪悪感に苦しんでいる子どももいました。犯罪者に罪を償わせるためとはいえ、そうした子どもたちから被害を受けた話を聞くのは、本当につらい時間だったし、申し訳ない気持ちだった。そして今もなお、社会からこうした犯罪はなくなっていません。
 悲しいことだけれど、犯罪はゼロにはなりません。でも、必要な制度をつくることによって、今よりぐっと減らすことはできます。今回は、みんなで法律をひとつ作ることによって、子どもに対する性犯罪をぐっと減らすための提案です。
 
 日本には、「子どもに日常的に接する仕事」から「子どもに対する性犯罪を犯した人」を排除する仕組みがありません。でも、「子どもに対する性犯罪を犯した人」はいわゆる小児性愛者である可能性を否定できず、その場合むしろ「子どもに日常的に接する仕事」を選んで就職する危険がある。だからこそ、同じ人が同じような現場に戻って同じような犯罪を繰り返すのです。だからこそ、必要な制度をつくって、子どもをターゲットにした保育現場・教育現場での性犯罪をなくしたい。いま、この問題に現場から取り組んできたフローレンスの駒崎弘樹さんや前田晃平さん、待機児童問題にも一緒に取り組んできた天野妙さんたちの力も借りて、法制局と法案作成を始めています。
 おそらく2段構えの仕組みが必要となりそうです。
 
 まず第一に、保育士・幼稚園の先生・学校の先生・ベビーシッター・学童指導員や塾の先生など「子どもに日常的に接する職業」に就業する資格として、「子どもに対する性犯罪歴がないこと」が必要だという制度設計です。
 これについては、

①そもそも国家資格が必要とされる仕事については、欠格事由リストを確認して、もし「子どもに対する性犯罪歴がないこと」が欠格事由から漏れていればそこを埋める作業が必要です。
②国家資格までは必要とされなくても「届出制」などの対象となっている仕事については、届出の際などの確認必要事項にこの要件を入れることができそうです。
③問題は、塾の先生など定義があいまいなもの。行政として把握しきれない仕事について、どう対応するか。ここは結構難しい問題で検討が必要です。

 第二に、第一のルールを『絵に描いた餅』に終わらせないため、「子どもに対する性犯罪歴がないこと」をきちんと確認できる仕組みをつくる必要があります。そのために参考になるのが、イギリスの「DBS(Disclosure and Barring Service)」という制度です。
 イギリスでは、「子どもに関わる職場で働くことを希望する人」はボランティアも含めて「犯罪歴証明書」の提出が義務付けられています。類似の制度は、ドイツ・フランス・オーストラリア・ニュージーランド・スウェーデン・フィンランドにもあります。
 一方、米国では、性犯罪者による子どもに対する凶悪事件が相次いだことをきっかけに、連邦メーガン法として性犯罪者の登録・公表制度があり、韓国にも類似の制度があるようです。
 「子どもを性犯罪から守る」という目的を達成しつつ、犯罪者から更生の機会を奪わないためには、アメリカ型よりイギリス型の制度が日本国憲法の趣旨に沿うのではないかと思います。
 
 こうした提案をすると、子育て世代に限らず広く一般の方々から、「ぜひ作って!」「こういう制度がない方がおかしい!」と言われます。他方、専門家のなかには慎重な意見もあって、おそらくその唯一最大のハードルは、「前科情報というプライバシーや職業選択の自由を侵害する危険」です。私も日本国憲法上の人権はきちんと保障されるべきだし、「公共の福祉」による制約として許容される制度でなければならないと思っています。
だからこそ、いま考えている制度設計では
〇対象となる職種は「子どもに日常的に接する職業」だけなので、他の職業につくことの障壁にはなりません。
〇対象となる犯罪歴は「性犯罪歴」あるいは「子どもに対する性犯罪歴」(ここは論点です)であって、広く「犯罪歴がないこと」まで要件とはしません。
〇しかも有罪判決を受けたものだけであって、疑いをかけられただけ、あるいは起訴されただけという場合は入りません。
 
つまり、今回の提案は
①「子どもに日常的に接する職業」についてだけは「子どもに対する性犯罪で有罪判決」を受けた人は就職できないようにしましょう。せめてそれ以外の仕事で更生してもらいましょう。
②そして、その条件をきちんと確認できる制度をつくって、性犯罪から子どもを守りましょう。
というものです。
 
きっと今も、人知れずつらい毎日を送っている子どもがいます。
学校に行きたくないって思いながら、誰にも言えないまま学校に通う子どもがいます。
1人でも多くの子どもたちが、経験しなくていいつらい経験をせず、毎日笑顔で保育園に幼稚園に学校に通えるように。
なるべく早く具体的な法律案で提案しますので、ぜひこうした問題があること、そしてそれは解決できること、を広げてもらえたら嬉しいです。

菅野志桜里
菅野志桜里(かんの・しおり)の公式noteです。「自由と民主主義と法の支配」を、この日本に、自分たちの力でしっかり根付かせるために。☆お問い合わせやご連絡は、当面、こちらのフォームよりお願いします→https://ihp.tokyo/