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憲法に書くべき緊急事態条項の3つのルール 【バランスのとれた緊急事態条項で前向きな憲法議論をPART2】

PART1のおさらい

PART1では、緊急事態の基本的なルールは憲法で決めた方がよいと考える理由。これを、次のように書きました。

約2年にわたるコロナ禍を通じて、私たちは苦しい経験をいっぱいしました。
子どもが学校に通えなかったり、お店の経営がとても苦しくなったり、病気の治療や手術が先送りになったり。
国や自治体からたくさんの制約を受けたけれど、いまだに、科学的な根拠や法律的な裏付けや経済的な支援が十分だとは感じられない・・・

だったら、国民として必ずしも納得できないという思いをきちんと振り返って、国民の考えで、緊急事態に政府に守ってほしいこと、支援してほしいことを整理した方がいいんじゃないか。

そのなかでも緊急事態の本当に基本的なルールは、その時々に政治家の多数決だけで決めるのではなく、前もって国民の意志で、国民投票のある憲法で決めるべきではないか。

こんなことを書きました。

基本的なところは憲法で決めるとして、基本ってなに?
緊急時には予想外のことが起きるけど、どこまで前もって決められるの?

そんな疑問も当然あると思います。
そこで今日は、PART2【憲法に書くべき緊急事態の3つのポイント】です。

そもそも緊急事態ってどういう事態?

今、私たちが緊急事態と言われてパッと思い浮かぶのは「コロナ禍」つまり「感染症のまん延(パンデミック)」ですよね。
でも、緊急事態はパンデミック以外にも3タイプあります。
つまり、①武力攻撃 ②内乱・テロ ③自然災害 そして④パンデミックです。(自然災害のなかでも独自の特色があるものとして原子力災害が含まれます。) 

ここで、論点その1。
憲法に緊急事態を定義するにあたって、この4タイプを具体的に書き込んだほうがいいかどうか、ということです。

たとえば、自民党の緊急事態条項イメージ案では「大規模その他の異常かつ大規模な災害により国会による法律の制定を待ついとまがないとき」というように書かれています。

でも、これでは③自然災害が含まれるのは分かっても、①武力攻撃や②内乱・テロや④パンデミックが入るのか入らないのかよく分からないですよね。

「武力攻撃」というような言葉を入れて国民を刺激したくないという気持ちがあったのかもしれませんが、だとしたら国民を軽んじすぎ。

ありうる事態をきちんと書いた上で、政府が必要なことをやらなかったり、やりすぎたりするリスクをコントロールする。そこに緊急事態条項の意味があるはずです。

私は、この4タイプを具体的にきちんと書き込んだ方がいいと考えてますが、みなさんはどう考えますか?

次に、論点その2。
4つのタイプを書いたとして、さらにタイプにあてはまらない事態を想定し、「その他」と入れておいた方がよいでしょうか?

たとえば・・・UFOで攻撃的な宇宙人がやってきた場合。
「未知との遭遇」とか「E.T」みたいな温厚平和型ではなく、「インディペンデンス・デイ」みたいな獰猛攻撃型・・・。
万が一そんな超危険な事態が起きたなら、「その他」が入れてあれば政府としては緊急事態宣言しやすいでしょう。
「その他」がないと、宇宙からの侵略は「武力攻撃」に当てはまるのか、いやいやこれまでの解釈だと当たらないかも・・・というような議論が出てくるかもしれません。

でも一方で、宇宙侵略みたいな今まで世界中どこでも起きたことのないレアケースのためだけに「その他」を入れておくと、もっと軽い事情でも政府が「その他」に当たりますと言い張って不要な緊急事態を宣言する。そんな危険もありますよね。

私は、そのメリットとデメリットを天秤にかけたとき、インディペンデンス・デイにすぐ宣言が出せるというメリットより、政府が「その他」を都合よく使う危険というデメリットの方が大きいな、と感じているので「その他」抜きの提案をしています。

さあ、皆さんはこの2つの論点、どう考えますか?
そしてこういう議論だったら、ケンカせずにワイワイ話し合える気がしませんか?

それこそ、UFO襲来以外にも、こんな万が一のケースがありうるよというのがあったら教えてもらえたら嬉しいです。

国家に力を「与えて」「歯止める」国民

こんなふうに、緊急事態にも大きく分けて4つのタイプがあることが分かってきました(いったん、宇宙侵略タイプ+αはおきます)。
こう考えていくと、4タイプに共通する基本的なルールをくくり出し、あまり細かく決めすぎないことが重要に思えてきます。
緊急事態条項は、決して国家をがんじがらめに縛ることが目的ではありません。やりすぎもやらなすぎもダメなのです。
だからこそ、国家には必要な措置をとる力を与えつつ、行き過ぎは歯止めることが重要
国家に力を「与えて」「歯止める」。このどちらもが国民の仕事なので、実は国民の仕事って本当に大変なのです。

緊急事態の3つのルールとは

そこで、諸外国の緊急事態条項などを参照しつつ(これもおいおい連載の中で説明できたら!)、これだけは事前に決めておきたい大原則3つがこちら。

ルール1「宣言を出すかどうかを誰が決めるのか
ルール2「宣言によって、誰の力を強化すべきなのか
ルール3「力が強化されるとして、その限界はどこか

そして、ごくごくシンプルに答えを提案するとしたら

ルール1の答え「政府と国会とが共同して決める(今は政府の一存です)
ルール2の答え「政府の力だけでなく国会や裁判所のチェックも強める
ルール3の答え「内心の制約や検閲や憲法改正はダメ。政令で立法できる例外は予め定めておくこと

こんなふうに考えています。

次回以降、このルールをひとつづつ分かりやすく説明できるようトライします!
PART3は【宣言を出すかどうかは誰が決めるのか?】
ここを深堀り。次回もぜひ読んでください!