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【いそがしいとき日記】その15


人の心というのは、思いのほか弱いものだと僕は思っている。

些細なことで自信をなくしたり、自己肯定感が下がったりする。


人の上に立つときにはそのことを充分に理解しておきたいと常々考えている。人の上に立つ、というのは、自分が偉い役職につくとか、そういうことだけじゃなくって。

年齢や立場などの関係性から、相手から見て自分が「目上」と認識されている場合も含まれる。

自分自身は、「えー?フラットでしょー?」と感じていても、相手からしたら先輩だったり年上だったり、ある種の威圧感を感じる対象として捉えられている、ってことはけっこうある。


そういう場合、自分からしてみたら何気ない行動が、相手の自尊心を傷つけ自信を奪うことにつながる、なんて現象が生じる可能性がある。本当に、よくよく注意したいものだなと思う。


相手に自信をなくさせる方法はいくらもあるけれど、僕が気をつけたいなと思うのは、「質問に対して笑う」こと。そして、「相手のチャレンジに対して笑うこと」だ。


「そんなことも知らないの?」「そんなに明確なことについての質問するの?」というスタンスでの笑いの行為は、本当に親しい友人同士であれば、ひとつのコミュニケーションの形として機能するのかもしれない。間柄によっては。(それにしたって僕はあんまり好きじゃないけど)

どちらか一方が上下関係を感じている状態でそういう「笑い」を用いたコミュニケーションを構築しようとするときは、本当に注意しなければいけないと思う。

「質問したことに対して笑われた」という事実は、その笑いがたとえ行為的なものであっても、立場が下の者にとっては気持ちのいい体験ではない。

質問の内容を笑われたのか、質問した行為を笑われたのか、質問をしにいった自分自身を笑われたのか。そんな体験に自信を削られた人は、次から質問をすること自体に恐怖を感じはじめるかもしれない。


チャレンジに対して笑うこと、も同じ現象を起こす。

笑う側は単に、そのチャレンジの姿が「愛らしく」感じられたのかもしれない。チャレンジの姿に「可笑しみ」を感じたのかもしれない。けど、ぜったいに笑ってはいけない。

チャレンジを笑われた人間は、次のチャレンジをためらうかもしれない。「その人の前ではチャレンジをすることをやめよう」と少なからず思うかもしれない。


人の上に立つ可能性がある人間はよくよく考えた上で「相手を笑う」という行動をチョイスした方がいい。

いや、よくよく考えた上でも「相手を笑うこと」がポジティブに機能することはごくごく稀であるから、むしろ人の上に立つ可能性がある人間はひとまず、「相手を笑うことはぜったいにしない」と誓うぐらいでちょうどいいのかもしれない。




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