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MBA流データドリブンマーケティングの学び方(明治ビジネススクールの場合)

サマリー

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明治ビジネススクール データドリブンマーケティング講座について

明治ビジネススクール(MBS)では、必須科目としてマーケティング基礎を学びます。さらに、実践イメージを掴むための選択科目として、データドリブンマーケティング講座を、2017年度より設置しました。

マーケティングにおける、データドリブンとは、データ(観測値)を使い、改善を繰り返していく考え方/所作です。IT環境の進化によって、データを共有し、マーケティング施策の精度を高めることが容易になりました。このマーケティング活動を支える仕組みを活用し、戦略立案と施策実行管理を連携することで、事業成長を加速する。これが、データドリブンマーケティングです。

広告や顧客管理など、マーケティングの現場はもちろんのこと、事業運営そのものが、データ駆動型へ変わります。誰もがデータを使い、自ら業務を設計する。マーケティング業務へのIT適用は、大きな可能性を秘めています。

MBSは、仕事をしながら学べる土日夜間のMBAコース。学生は、それぞれの職場で、マーケティングが必須になると思い、進化するデジタルマーケティングに触れて理解したいと考えています。その一方で、マーケティングには興味があるけれど、データドリブンという聞き慣れない言葉には敷居の高さを感じる。なんだか難しそうだという声も聞かれます。

そこで、本年度はデータドリブンマーケティングチームを立ち上げる実習を行うことにしました。受講生をマーケティング組織のメンバーと見立て、戦略から実践までを一通り体験する。これにより、マーケティング未経験者であっても、データドリブンマーケティングをより身近に感じることができると考えています。

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マーケティングの実践に必要なこと

受講生の背景/ニーズはそれぞれです。「新規事業の担当になった」「マーケティング部門に転属したい」「デジタルマーケティングからカバー範囲を広げたい」「自分の事業を立ち上げたい」など。マーケティングを実践するための有用な知識を求め、データドリブンマーケティング講座にたどり着いているようです。

受講生は、データ活用やシステムのことが分かれば、マーケティングの理解もより高まるとの期待を持っています。そして、その「早道」を知りたい。では、何から始めれば良いのか?まずは、受講生にマーケティング知識スキル習得の課題を聞きました。

①そもそもやったことがない。成功のイメージが掴めない。

初学者向けのプログラムなので、マーケティングの実務経験は不問にしています。しかしながら、「マーケティング」には、そこへ飛び込んでみたいと思う反面で、気軽に踏み出せない何かがあるようです。社会人として、現在までの目標を成し遂げたからこそ、このキャリアはある。しかし、もしマーケティングのノウハウを駆使していたら、もっとうまくいっていたかもしれないという思いがあるようです。

②理論は学んだが、現場で何からやればよいか分からない。

ビジネススクールで初めてマーケティングを学んだ学生たちに多いのは、「基礎的な考え方は理解した。しかし、いざ現場に適用しようとすると、最初の第一歩から躓いてしまう」ケースです。「戦略をつくっても成功する気がしない」「周りの部門を巻き込めない」「馴染みのない市場にどう対処すればよいのか(留学生)」など、事業への意気込みと、初動の難しさのギャップに苦心しています。

③デジタルで、マーケティングは複雑かつ高度になった。

顧客データ、マーケティング関連データの重要性は増しています。デジタルマーケティングはもとより、データ分析、システムの知識がマーケティング実践には不可欠となっています。データベース、統計解析、AI(数学)なども理解しておきたいが、その分必要な知識は多くなる。これからマーケティングを志す身にとって、参入障壁が高くなっているように感じられます。

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戦略から実践への橋渡し

どうやら課題は、マーケティング戦略とデータドリブンなマーケティング実践との関係がよく掴めないことにあるようです。ではここで、データドリブンを実践しているマーケティングチームの特性を分析してみましょう。

データドリブンマーケティングは、マーケティング担当者だけの仕事ではありません。開発(技術)、営業部門に加え、IT、データサイエンティスト等の専門家との協働が必要です。そのためには、関係者全員がマーケティング戦略を共有し、各人の役割と業務の手順も明確にしなければなりません。また、データドリブンマーケティングを行う上で必要なさまざまな知識を、メンバー間で共有する活動も積極的に行なわれています。

もし、受講生自身が、これらの協働、メンバー間の知識共有を疑似的に体験することができれば、戦略と実践との関係ついて、より深い理解と手応えを得られるはずです。そこで、本年度は、データドリブンマーケティングチームの基本動作/組織的能力を学びつつ、受講生をメンバーに見立てた、データドリブンマーケティングチームを立ち上げる実習を授業に組み込むことにしました。


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チームで学ぶマーケティング

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①戦略と実践を繰り返す(実習)

データドリブンマーケティングは、戦略⇔データ分析⇔プロセス改善を繰り返すことです。ただし、マーケティング戦略があやふやでは、データ分析改善効果は限定的で局所的な業務効率化に留まります。誰に、どのような「価値」を届けるか?というテーマ設定が大切です。

データドリブンマーケティング講座では、受講者共通の関心事項である、データドリブンマーケティングをマーケティングの対象とし、「データドリブンマーケティング習得の方法論をつくり、広めること」を、チームの目的に設定しました。

具体的には、このデータドリブンマーケティング講座で学んだことを記事化し、コンテンツマーケティングを行う。戦略から実践までの流れを、受講生全員(チーム)で進めていきます。

②マーケティングを仕組みとして理解する(講義)

データドリブンマーケティングは、Eコマースやウェブサービスを通じて発展してきました。ユーザーの情報探索から購買行動をシステムに記録し、蓄積されたデータを観察/解析する。これにより、投入した経営資源(ヒト/モノ/カネ)に対して、どれだけの事業成果(顧客/売上/利益)に結びついたかを分析し、マーケティング活動(業務プロセス)を継続的に改善します。

従来型ビジネスにおけるマーケティング活動においても、市場調査や、顧客別売上などのデータが、さまざまな形で活用されてきました。デジタル上での顧客接点では、データドリブンマーケティングも一部導入されています。しかしながら、デジタルマーケティング業務の個別最適で留まり、データが十分に活用できていない例も散見されます。

データドリブンマーケティングは、全マーケティング活動を、観測可能な数値モデル/仕組みとして記述することから始まります。そのために必要な、管理会計、データマネジメント、プロセス設計の基礎知識を学びます。

③マーケティングツールを使ってみる(情報共有)

データドリブンマーケティングにおいては、サイトアクセス分析、MA(マーケティング自動化)、DMP(データマネジメントプラットフォーム)など、様々なマーケティングツール(SaaS)が活用されています。実践では、これらのツールに習熟することが不可欠です。

業務領域毎のツールには、概念知識から操作方法まで、多数の関連コンテンツが公開されています。ツールごとに用途の向き不向きはあるものの、実業務の雰囲気を掴む上で、まずは標準的なツールに触れてみることが早道だと考えています。

データドリブンマーケティング講座では、様々なツールを紹介するとともに、チームマネジメントのツールを活用して、講義と実習をつなぐ議論ができる仕組みつくりにも挑戦しています。

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講座のゴール/講師の役割

エンジンの仕組みや最新技術を理解しなくとも、交通ルールと基本的な操作さえ知っていれば、自動車を運転できます。ただし、免許を持っていても、車で実現したいことがないと、運転の機会は少なくなりそうです。

マーケティングもまったく同じです。マーケティングの実践に、データ分析やシステムの深い知識そのものは必要ではありません。マーケティングで実現したいことが明確であれば、そのために必要な知識を自然と活用するようになります。

デジタル技術は日進月歩ですが、戦略を立案し実行する一連のステップは、従来のマーケティングと何ら変わりません。必要なのは、ゼロからのステップを一通り経験することです。全体像を掴み、得られるデータから仮説を導く過程で、よりマーケティングの理解が深まると考えています。

4カ月後のゴールは、このデータドリブンの「マインドセット」を出来るだけ多く感じ取ること。自分たちが欲しいものをつくり、広めていく。講師は、専門知識を伝えることはもちろん、マーケティングチームの一員として、ともに実践の役割も担います。

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