言葉選びとニュアンス

言葉を選ぶとは

三種の神器をご存知でしょうか。

草薙剣
勾玉
八咫鏡

この中で言葉を司るのが、草薙剣です。
他にも本邦には宝剣・宝具が溢れておりますが、この剣は特に重要です。

草とは言ノ葉の事。
薙は切って崩す事。

ペンは剣より強し。

武具の象徴としては少々矛盾しているように見えますが、言葉は何よりも強い力を持っているという事です。

そこで重要なのが言葉を選ぶ事。
剣は武器ですので、振り回す場所を選びます。
それと同じ事で、言葉も使い分け、時と場合を選んで使い分ける事が重要なのです。

言葉に関しては様々な慣用句や諺がありますね。

口は災いの元
覆水盆に返らず
言わぬが花
沈黙は金 雄弁は銀

などですが、特に言葉は取り返しがつかない。
撤回などは決して許されない。
故に慎重に選ぶべき。
普段何気なくしている会話ですが、本来はそう言った厳しいものであります。

私は口が達者な訳でもなく、知も乏しく学もありませんが、言葉選びは気をつけております。


その為には、段階が必要なのです。
いわゆる、作文、小論文のようなものです。

カウンセラーなどではない見知らぬ人に突然悩み事を打ち明けたらどうでしょう。
状況が分からず、驚きますよね。
文脈の理解度も下がります。

まず、慣れとその為の空気が必要です。

まずは挨拶から。
それから自己紹介を兼ねた雑談。

少しずつ心を開いていって、やっと心の奥底の思っている事を打ち明けられます。

会話とは心を開くための手段であり、その為に優しい言葉、柔らかい表現を選んでいきます。

しかし、またそこでニュアンスというものがネックになってきます。

例えば愛し合っているカップルがいたとします。

いきなりどちらかが突然に

「自分たちは愛し合っている」

などと言った場合、相手の気持ちに寄りかかり胡座をかいているような、甘えているような傲慢な印象を受けます。

これはあまり良くない。
こう言った関係は長くは続きません。

人間関係で重要なのは精神的自立です。
どちらか一方が甘えっぱなしになると、エナジーバンパイヤとなって関係が崩れてしまいがちです。

鋼の心を持っている方ならば耐えられましょう。

しかし、そんな人は滅多にいない。

では、どういう風に愛を語りあえば良いのでしょう。

答えは、先程申し上げたように段階をつけることです。
雰囲気作り。
クッションをたくさん置く事。
言葉のクッションであり、実際の枕類ではありません。


「あなた、愛してる」

「ぼくも愛しているよ」

「私たち通じ合っているのね」

「そうだね。愛し合っている」


このように、相手の気持ちを確認してから現在の状況を伝え合います。

これは極端な例ですが、同じ「愛し合っているね」という言葉でも、前置きの愛の告白により、印象が随分変わります。

要は押し付けはいけないということです。

お互いの気持ちが分かりきっていたとしても、クッションとなる言葉や雰囲気は必要です。

このクッション作りを怠るのは男性によく見られる気がします。
勿論、そこに性差は無いと言いたいところですが、やはり傾向として言葉は悪いですが、言葉足らずな所は男子によく見られます。

一方で、女子には「察して」文化がよく見られます。

この心理は何でしょう。
空気を読む、察する。
説明が嫌な訳でも無いでしょうに、何故そんな事を望むのでしょうか。

それは、深層心理でサプライズの要求があるからと思われます。
もしくは賞賛。
この欲求が根底にあるのでしょう。

例えばです。
ネイルアートが上手くいったとしますね。

「見て見て! ネイルが超盛れた!」

と言ったところで、男性には

「ふーん」

で終わってしまう。
会話が続きません。
そんな恐怖があるのではないかと経験から学び、敢えて言うのを辞めたりします。

その場合は、相手がそういう人間だと諦められれば良いのですが、そうは問屋が卸しません。

「あれ? 爪綺麗だね」

その一言。
サプライズに匹敵または同等の喜びが得られます。
私の事を見てくれているのね。
状況にも寄りますが、そう言った喜びも相まって、女性はご機嫌になります。

これは、男性にとって大変な苦行であると思われます。
相手の事を見ていない訳ではない。
褒めたくない訳でもない。
自分の事で精一杯。
ただそれだけなのに、観察と感想を求められる。

しかし、真に相手の事を考えたサプライズとなれば、このくらいの気回しは当然であり、相手を驚かそうとすることは本当に難しいのです。

言葉選びとは少し外れましたが、要は空気が大事だという事です。

空気作り。
会話の流れを作る。

その中から必死に考えて語彙を選び、柔らかい雰囲気を保つように努めます。

一生懸命考えて出した言葉。
きっと気持ちが伝わると思います。
相手の気が乗らなかったらそこまで。
運・縁が無かったと思って、静かに瞳を閉じます。

この思考の癖を付けておくと、頭がハッキリしてきます。
同時に神経をすり減らします。
しかし、少しずつですが世界の解析力が上がっていくのです。

時と場合によりますが、出来るだけ綺麗な言葉を使いましょう。

相手には何が効くか分かりません。

接近戦の剣
単刀直入

遠距離の銃
遠回しな言い方

中距離の薙刀
少しの読みで通じる相手

この使い分けが出来るようになっても、やはり会話が上手くなる訳でもありません。

やはり、会話の本髄は内輪ネタですから。


それでも、ちょっとした瞬間に気の利いた事が言えるようになると株が上がります。


恨み言の多い世界、社会、人間模様。

それでもなんとか一筋の希望を見出して、偽物の欠片にキスをしつつ生き抜いていきましょう。

乱筆乱文失礼致しました。

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