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アリスについてのおはなし



鏡の国のアリスの考察を書きましたが

鏡の国のアリスについての考察を書きましたが、体力が尽きて強引に執筆を切り上げた為に不完全燃焼感が拭えないので、今回はその続編です。


白の歩となったアリスは白の女王と出会い、彼女の身だしなみを整えてやります。
白の女王を身綺麗にする=自分の身の回りを整える。
という意味にも取れます。
社交界デビューを果たしたアリスは、悪い大人に虫食いにされることは避けられましたが、今後のより良い未来の為に淑女としての嗜みを身に着けねばなりません。
いつまでも粗野でいられないのです。
なぜなら、そういったことも出来ない・行儀作法を放棄する精神をもつ以上、出世への道は断たれるが故。
どんな場所においても
「このくらいのこと、なんてことないわ。」
と言えないと将来は暗い、という残酷な事実を示唆しています。

社交界で一流の振る舞いをするには途方もない努力と根性が必要になるのですけどね。
たとえ実現への道は遠くても、努力だけはしなければならない、という。
意識を持つのは大事です。
一度堕落を覚えると、坂道にこぼれたオレンジのように、どこまでも転がり落ちていきます。


白の女王は「自分は未来が見える」と言いましたが、それはチェスの世界だからですね。
チェックメイトまでの手順を先読み可能である、と述べています。

将棋やチェス、囲碁はパターンを丸暗記してその通りに辿っていくと、自然と勝敗が見えてきます。
それを言っているのでしょうけれど、まずは相手の駒の出方を見ることから始めないと、パターンを見切っていても勝負に負けてしまう可能性も捨てきれません。

相手が想定外の動きを取った時、新たに作戦を練り直さねばならない。
その時その時、臨機応変の心が求められます。

それを知ってか知らずか、白の女王は羊に変身して行動を起こします。
世の中がどうなるのか大体分かったつもりでも、肝心の舞台で実際に踊ってみないと分からない。
大声で未来視が出来るとアピールしたところで、何の意味もない。
いきなりプリマドンナを目指すのではなく、まずは群舞として大多数に紛れ込んだ方が土台の構築が可能で、気楽で安心ができる、と悟っているのですね。

これはコロナワクチン騒動に似ていますね。
ピーク時、何故マスクをしなければならないのか、何故ワクチンを接種しなければならないのか、という反発が起きて揉めに揉めました。

マスクをしなければならない理由。
最凶の感染経路、エアロゾルの被爆ダメージを軽減するためです。
何故ワクチンを打たねばならないのか。
人によって、抗体が出来るかどうか確証はありません。
私は打ってないです。
しかし、打たねばならぬのですよ。
一回でもいいから。
自然感染で抗体は殆ど出来ません。
ダメージが残るだけ。
ワクチンなら、少しは抗体が役に立つ場合もあります。
本当に一回でいいんですけどね。
やはり、少なからずダメージが発生するので。

ワクチンにより遺伝子組換は起こりません。
そんなに人間の肉体は繊細ではないです。


白の女王なら、ワクチンによるダメージを懸念しつつも何の抵抗もなく接種したでしょう。
マスクをしたでしょう。
損得勘定込みで考えても、そっちのほうが利が大きいからです。
なにより、皆と同じ行動を取ることで余計な争いをすることも無駄に恥をかくこともありません。
ただでさえ、人生には恥が多いですから。


それが大人というものです。
これが嫌だと言うのなら、まだ先のステージに進むには時期尚早ということになります。

アリスはなんとなく、白の女王に付き従いました。
鏡の国の前の、不思議の国に入る前のアリスだったら反発したことでしょう。
「羊なんていやだわ」と。
しかし、彼女は社会に揉まれ、ほんの少しお姉さんになったのです。
未だ猫相手に空想ごっこをするような少女の心を捨てきれずにいるものの、相手に合わせることを覚えた。
冒頭に出てくる花壇の、話すオニユリやバラに教えて貰ったのだと思われます。
「無駄に反発しても良いことないわよ」
「まずは相手の出方を見なさい。そうしないと、勝てるものも勝てないわよ」
と。


そうすることで、アリスはチェスのマスを進めることが可能となり、ポーンからクイーンになることが出来ました。

しかし、クイーン・と金になったとて、出来ることは限られてしまいます。
進める方向の選択肢は増えました。
チェスのクイーンは、将棋の飛車角のような動きが可能。
しかし、所詮はチェス盤の中でしか動けません。

結局、求められるのは「チェックメイトが可能か否か」それだけです。

「相手の陣地に入った!やった!自由に動けるぞ!」
つまり出世しても、本性場はそこから、ということ。
やっとスタート地点に立てた、としても過言ではありません。

赤の王・敵陣の将を詰めるかどうか。
肝心のオチは、結局自分は赤の王の手の平の上で踊っていただけに過ぎなかったのか?と混乱しています。

鏡の国のアリスは全く無意味な物語だったの?
いいえ。
アリスはチェス盤の上で不思議な体験をしたことによって、少しだけ淑女の心を知りました。
体験・経験・知恵。
成長した自分。
これが何よりの報酬だった、という解釈により、この物語は生きてくるのです。


お人形のアリス


和田慎二の最後の作品・傀儡師リン。
主人公の鹿島リンは傀儡師。
パペッターである彼女は、マエストロという謎の天才に自分にそっくりな姿をした「アリス人形」を作って貰います。
人形のコアとなる木偶を巡り、アリスを初めとした10体の人形が姿と場所を変えながら交流していく、という物語です。
交流と言っても、殆どバトっているのですが。


和田慎二は、昔からアリス狂いでした。
過去作品に、これでもかとアリスの要素が散りばめられています。
傀儡師リンに出てくるアリスは、現代版アリスですね。
更に、このアリスはヨーヨーを駆使して戦います。
スケバン刑事か…という。
漫画家がたまに描く、自作品の総集編みたいな感じです。

CLAMPのツバサ・クロニクルとかそんな雰囲気。
この話はさくらが主人公で相手役は小狼ですけれど、いろんな過去作のキャラが出てきますね。

傀儡師リンは、過去作品の転生体が山程出てきます。
ツグミ、オリエ、エルザ、マリウス、碧子、美幸、ナツ、八雲、アコ、舞…。

それはともかく。
不思議な国、鏡の国を経由したアリスは、世界中の大勢の人に愛でられ、モチーフ化され、やがてアリスとしてのキャラクターの確立に成功した、と見れますね。
大出世ですよ。

物語から飛び出して、空想世界という名のチェス盤の上で幾つもの世界で活躍しています。
結局、チェスの外からは出られないようですが。

名も知れぬ傀儡師の手によって、アリスは踊る。
それはクリエイターと呼ばれる人。
誰でもなれます。
アリスの物語を作る。
それは、誰でも仮想アリスを操る事ができることを意味する。

歪みの国のアリスとかいうヤンデレっぽい作品もありましたね。
制作者は、アリス人形を操るパペッター。
厨二にして、メンがヘラっていたのでしょうか…。


傀儡師リンに出てくるリンは跳ねっ返りの高校生なのですが、マエストロは「お淑やかな女性になるように」という願いを込めてアリスを作りました。
リンは、アリスや幼馴染のトモ、ミトさん、木花開耶姫、クレオパトラを始めとする人形たちに囲まれながら少しずつ成長していきます。

そして、8巻に出てくる爆弾発言。
「お人形は女の子のためにあるのよ。男が持つ資格なんてないのよ」
「人形と親友になれるのは女の子だけよ」

人形の能力を開花させることが出来るのは女の子だけ、とリンは言っています。

少女漫画なので女主人公が特別に描かれているというのもありますが、これはちょっと極論だと思いますけどね。
和田慎二は男性です。
フィギュア遊びを覚えて、アホ毛をリンとトモに付けました。
和田慎二にとっても、リンやトモはお人形なのですね。

これは、人形と共に成長する必要性を説いているのですね。
リンのライバルの麻丘雅は男性ですが、途中で死んでしまいます。
そこでブラックジャックのピノコの原理で、双子としての雛という女人格が覚醒するのですが、この人はとにかく未熟でいけない。

雅の方がずっと大人で、あらゆる要素を超越しています。
雅は天草四郎時貞とアンドロメダの才能をもっと開花させることが出来たはず。
物語の中では雛が覚醒させている風に見せていますが、本当は違うと思います。
雛は、男にも女にもなれない未熟な人間です。

ここでの男性・女性というカテゴリーは、肉体の性別を指すようではないようです。

これは30の世界のセフィロトの図ですが地球のすぐ下に水星と金星が来ていますね。
水星は強い女。
金星は優しい女。

つまり、この2つは性を超越した証と言えます。
人間は、火星、水星、金星の要素を乗り越えて、初めてヒトとなれることを意味しています。


傀儡師リンの登場キャラは、真実の惑星と呼ばれる性の要素を超越出来ていません。
故に、人形を通してセフィロトについて学んでいるのです。

麻丘雅は、恐らく火星を乗り越えている。
水星に入ろうかどうかというところです。
雛は火星すら到達していません。
故に、雅の体をのっとったと喜ぶも束の間、雅の影がチラついて苛ついています。
人間として、雅に負けている。
リンは、アリスとの遊びをやっと覚えたところ。
火星を乗り越えた、というところでしょう。
トモは水星を乗り越えて、金星に入っています。

クリフォトを見ると、月(物質)と繋がる太陽(核)その回りを、火星、水星、金星が取り囲んでいる。

月、人形、モチーフとしての概念としての物質を通し、人間的な成長をすべき、という意味があります。


ここでは、コクマーなどのセフィラの要素は省かれています。
それは旧セフィロト図の月に含まれるものだからです。

真実の太陽、現界プレアデスの中枢から見れば、全ての恒星・惑星は衛星扱いされています。
やはりここでも、水星と金星が地球、月と直接的につながっていますね。

20マヤの世界を意味します。
ここでは、女の子しかお人形遊びが出来ないのよ、という残酷な真理が囁かれている。

和田慎二は、性を超越していたのでしょう。
作品はわりと過激でしたが。
同じ性を超越した少女漫画家に、魔夜峰央がいます。
この人はBLを笑いのネタにしていますが…。



さて、この先はあくまで推論です。
死んでしまった雅は、今後復活します。
雛と入れ替わりで。
雛の死もしくは再入眠もしくはそのままの状態で、雅の人格が再び表に現れます。
何故か。
雅は最強でなければならないからです。
男・女を超越して、ヒモの明人と共に活躍しなければならない。

天草四郎時貞の真の持ち主は、麻丘雅です。
雛を経由して完全体となった雅こそ、時貞のマスターとなれるのです。

そもそも、時貞は基本的に同性愛者です。
アンドロメダと一緒になってはいますが、彼はバイでもあるので女性パートナーと男性パートナー、両方を必要とする。

心の友ですけどね。
どうしても、同性でないと打ち解けることが出来ない男性というのはいる。

そして、進化しないと思われた木花開耶姫はここで進化します。
女体となってしまった雅の肉体を男体に戻す。
死者蘇生の能力を使うようになる。
雛と雅を引き離す。
サクヤは、亡くなったリンの姉のしおりをビジョンとしています。
時貞のビジョンは雅。

性と生と死を乗り越えた様子を描く作品、ということになります。

リン達の感覚は古い。
男の子も人形と親友になってもいいよね?
という。
男性も少女漫画を描いて良いよね?という現れでもある。


人形は、まず愛でる。
そして一緒に遊ぶ。
やがて心のパートナーへと昇格する。

そこまでの経緯が長い長い。


月(物質)は何も語らない。
けれど、間接的になにか大切なものを教えてくれる。
自分の中に潜む何かを引っ張り出してくれる。


アリス人形は、そうでなければなりません。


空想遊びは、心を育てます。
アリスはいずれ卒業するでしょう。
けれど、その時はルイス・キャロルのように物語形式に整理整頓が出来ることでしょう。

夢オチで強引に終わらせない。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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