ショートショート フシギドライバー

私が部屋で躓くと、息子がドライバーを患部に当てた。
「こら、それで遊ばない」
「でもロボのしゅうりにひつようなの」
おもちゃのロボの事だ。
「パパ人間だし治らないよ」
「これはね、フシギドライバーだからなんでもなおるよ!」
息子はドライバーを捻り続けていた。




ロボ映画のCMを見て昔を思い出した。
「休職を勧めます」
息子の事を医師に相談した所、そう返された。
久々に会った息子には、以前のような快活さは無かった。


息子が苛ついて居間に入ってきた。
「…パソコン動かないんだけど」
「もう古いからかな」
「…修理しないとな」
「修理か」
私はある物を持って来た。
「何それ」
「ドライバー。父さん日曜大工得意だから」
「は?」

「そういうのじゃないし」
息子が、笑った。
改めて見ると幼い頃の面影がある。

ある言葉を思い出した。
「これはフシギドライバー、何でも治せるらしい」
「らしいって何それ」

私に、そんな力は無いかもしれないけれど。

私の視線に気づくと、息子は照れ臭そうに顔を背けた。


【419文字】

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