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aoming
ショートショート 株式会社のおと
『株式会社〇〇、食品偽装か』
新聞の目立つ位置に記事は載っていた。
株式会社〇〇、親父の会社だ。
「もしもし、親父の様子どう?」
「落ち込んでるわよ、お父さんも知らなかったからね」
いつも険しい顔で仕事の印象しかない親父。
そんな親父が落ち込むなんて。
「また顔見せに来てね、喜ぶと思うから」
昔の事だ。
俺は中学生になり夜更かしを覚えた。
深夜2時頃、親父が帰ってきてかなり驚いた。
それまで親父がいつ帰宅してるのか知らなかったのだ。
働き出し、家庭を持つ今なら分かる。
親父は俺達の為に身を犠牲にして働いていたんだ。
事件から数ヶ月後、株式会社〇〇は音を立てて崩れ去った。
「大きくなったねぇ」
娘の頭を撫でる親父。
「元気そうでよかったよ」
「…こんな風にお前を可愛がる事も出来なかったかもな」
「お前もあまり無理はするなよ、時間は戻らないんだから」
今までの親父からは、考えられない助言だった。
「結局なるようになるもんだ」
娘の相手をする親父は、終始顔を綻ばせていた。
【417文字】
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