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ショートショート 感想文部

このラーメン屋は親父から継いだ。
親父の旨くはないラーメンも俺はそのまま継いだ。

不味いので客は定着せず、親父の客も来なくなった。

「潮時か…」
そう呟いた時だ。

ガラガラ

「さぁ、感想文部の活動開始です」
あの高校生が来た。



閉店後、スマホを確認した。
『魚介系スープは旨いが、まだ脂っこい 3.5点』
奴だ。前回より高評価…でも腹立つ。
奴は毎回グルメレポを残す。

レポは的確だ。
実際、従う事で客足が増えた。
今じゃ時々TVにも出る。

しかし、奴だけは未だ4点をつけなかった。


「美味しくなりましたね」
「ど、どうも」
初めて言葉を交わした。
「僕、引っ越しで今日が最後なんです。
この店は…感想文部の僕の青春です。
あ、本当は帰宅部ですけど」
「…どうぞ」
「丼のサービス…いいんですか?」
俺は笑顔で返すと、奴も笑顔で返した。


…俺にとっても青春だったかもな。
閉店後、スマホを操作する。
奴からのレポだ。

『この店は客によってサービスを変えるのか 2点』

俺はスマホを床に投げつけた。


【419文字】

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