山の美月光岩白茶

2019年。3月9日。奈良にてお茶を追求した茶師がお亡くなりになりました。
その茶師のAbeちゃんに作り方を教わったのがこの月光白茶です。
茶葉のファーストフラッシュです。

山の美農園の棚田の境目には石積みがされていて、その石垣の間からお茶の木が生えています。
お茶の木の寿命は、種からなら1000年。挿し木で500年と言われるほど長く、山の美農園のあちこちに自生したり、大昔の地主さんが植えたと思われる在来種のお茶の木がたくさん生えていました。

昔の人は、お米からお茶までなんでも自分の家で作ったのだなぁと実感しました。土地の恵みを大切にした生き方って素晴らしい!

在来種のお茶の木の葉は、小ぶりでとてもよく香ります。
また、石の間から生えるお茶の木は、土よりも保湿力が少ない中で育つので、雨や湧き水で濡れた石の水分に依存しているので、より多くのミネラル成分が含まれていると言います。

Abeちゃんの亡くなった年の元旦。
病に伏せているAbeちゃんの元へ、お見舞いをかねてご挨拶に行きました。
そこで、質問したのが、お茶のこと。

お茶といっても、煎茶、抹茶、番茶、紅茶、烏龍茶、などなど、製法によって名前が変わるお茶。それがおもしろくて、山の美のお茶の木の活かし方を模索していたところでした。

春の新芽の茶葉は、どのお茶にするのがおすすめ?と質問すると、教えてもらったのが、この白茶。パイ茶と読みます。
素敵なガラスの急須にいれて、茶の色を楽しみ、本当は夏のお茶だけど、と言って、なん煎もいただきました。

かの岡倉天心も愛したお茶と言われ、新芽の時期の満月の夜。月の柔らかな光をあて、朝には家屋の中で日陰干ししたものです。

新芽の一芯二葉(いっしんによう)は、大昔より八十八夜に積むと縁起が良いと言われています。
そこで、八十八夜に一番近い満月の日を、一番茶の茶摘みの日としました。

白茶は、そもそもは中国に伝わるもので、夏の暑い時期に体を冷やす薬草茶として飲まれていたようです。

そして中国の茶道具の中には、小さ目の急須があり、その急須いっぱいに茶葉をいれて、熱い湯を注ぎ、なんども、何煎も、少しずつワンコ蕎麦ならぬ、ワンコ茶を楽しむ習慣があるそうです。
1煎目から茶葉がだんだんと広がり、最後は白湯を飲んでいるかと思うような薄いお茶になりますが、その変化する味を楽しむ時は、とても心が豊かになります。

白茶はお茶の中では一番シンプルに簡単に作れますが、その分、育った環境がそのままお茶になるので、無添加はもちろん、無農薬の茶葉を使用するのがおすすめです。

山の美農園の2019年度の月光白茶ファーストフラッシュは、とても茶葉が小さく、一芯一葉のものもありました。
小さく、ふわふわな茶葉は、乾燥させるとさらに小さくなり、ほんの一握りの白茶ができました。
2020年八十八夜近くの満月の日の茶葉は、昨年よりとても大きく、すでに一芯三葉になっているものもあり、より柔らかい部分だけを摘むことにしました。乾燥させても大きめなので、おすそ分け出来るくらいの量になりました。

お世話になっている方々に、夏のお茶として贈り物にできたらと思います。

R.I.P. ABE




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