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結城哀草果の歌(「私の好きな短歌」より)

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2021年10月の記事一覧

私の好きな短歌、その30

路地ふかき二階にひもじく住む友に光のごとく訪ふをとめあり

 結城哀草果、歌集『群峰』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p158)

 青春映画のような、屈折の中に開放感のある歌だ。上三句の込み入った感じが、下二句でスッと解放される快感がある。詩的であると同時に写実的でもある。
 上三句で友の生活している様子が映像として浮かび上がり、それに対しての「光のごとく」がいい。短歌において「ごと

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私の好きな短歌、その29

村祭に鏡売ゐて群れきたる娘の顔に反射させるも

 結城哀草果、歌集『山麓』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p154)

 作者がいるのは山形県の農村である。このころは、鏡売という商売があって、村祭に売りに来ていたのか。短歌を通してかつての社会の様子を知ることができるのは楽しいし、時代の記録としても必要なことだと思う。農村の娘たちは、仕事に追われる日々とは違うなにか楽しいことがあるはずと

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私の好きな短歌、その28

夕照雨はらはら光り輪のなかにわが里いれて虹たちにけり

 結城哀草果、歌集『山麓』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p154)

 「夕照雨」は作者の造語だろうか。「はらはら」といい、「輪のなかにわが里いれて」といい、情景を見事に再現している。私の住む田舎でも大きな虹が立つことがあるがまさに、「わが里いれて」である。しかしこの表現は思いつかなかったと思う。情景は珍しくないものかもしれない

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