私の好きな短歌、その30

路地ろぢふかき二階にひもじく住む友に光のごとくふをとめあり

 結城哀草果、歌集『群峰』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p158)

 青春映画のような、屈折の中に開放感のある歌だ。上三句の込み入った感じが、下二句でスッと解放される快感がある。詩的であると同時に写実的でもある。
 上三句で友の生活している様子が映像として浮かび上がり、それに対しての「光のごとく」がいい。短歌において「ごとく」という直喩は、陳腐になりそうで使いにくいものだが、私には新鮮に映った。ありきたりな表現だと感じる人もいるかもしれないが‥。「をとめ」を「光」に喩えることで多様な意味が生じ、歌に深みが増していると思う。
 初句の「路地ふかき二階」という表現もうまい。

 『群峰』は1946年(昭和21)刊行で、1935年(昭和10)から1938年(昭和13)年の歌が収められている。刊行時、作者54歳。作者生没年は1893年(明治26)ー1974年(昭和49)享年82歳。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?