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土曜の朝のバイオリニスト(2022.12.17)

・体重69.3kg
・禁酒153日

久しぶりに土曜の朝にゆっくりできた。いつもなら誰かしらを小児科へ連れて行かねばならないから目覚ましをかけずにちょっと寝坊できるのは何より贅沢なことだ。

そんな朝は地元の情報番組をだらだらと見ながら過ごす。たまに知っている店や地元が出てきたりするとテンションが上がる。特にラーメン特集などあったりすると、身を乗り出して見る。地元局のアナウンサーやローカルタレントなどの大袈裟な食レポに相槌を打ったり、突っ込みを入れたりする。妻はそれをいつも煩わしそうに、「またか」という表情で見ている。

今朝もそうやって情報番組をハシゴしながら見ていた。あまり興味ない話題ばかりだったので流し見程度だったが、ある番組の最後だけがめちゃくちゃ良かった。

大分出身でハーバード大学とジュリアード音楽学院を首席で卒業したバイオリニストの廣津留すみれさんが伴奏をつけずにスタジオでバイオリンを生演奏したのだった。

みんなわちゃわちゃしていた。テレビなんてろくに見ていなかったが、演奏が始まるやピタっと止まり、バイオリンの音色に聴き耳を立てた。子供らでさえ遊ぶのをやめた。長女(3歳)はまるで雷に打たれたように直立し、テレビの中でバイオリンが演奏される様子をじっと見ていた。

しばらくの間部屋に静寂が訪れ、バイオリンの音色だけが響いた。全員がバイオリンの事などろくに知らないし、私と妻は未だに触れたこともないけど、その演奏が素晴らしい事だけは分った。

すごく細やかで美しい音色だった。弦が奏でる音のひとつひとつはか細く、今にも千切れそうだったが、それが時々まとまって束のような強い音になった。風が水面を撫でて木々を揺らし、稜線を駆け上るように、音色は楽しそうに遊び、自由そのものだった。

短い演奏だったが、その間だけ雑多な日常を忘れ、音に身を委ねることができた。ふと見ると妻は目に涙をためており、それは私も同様だった。素晴らしい演奏というのは理屈を超えてくるもんだなと思った。いつもはBGM程度に見ている番組だったけど、あまりに良かったので、番組の感想をメールしようかと思ったくらいだ。

廣津留すみれさんは演奏のあとに少しだけスタジオでトークしていたが、すごく柔和で知的な人柄だった。演奏にもその人柄が表れているんだろうなと思った。管弦楽とか普段全然聞かないけどちょっと聞いてみようかと思った。

それからあとは雨も降っていたしすごく寒かったので外にも出ず、夕方に唐揚げを揚げて食べ、皆は早々に寝た。そして今外は雪が降っている。朝になったら辺り一面銀世界だったら子供たちは喜ぶだろうなぁと思う。


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