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地域との連携において、大学に期待すること

山梨県立大学地域研究交流センターが、本学の15周年にあわせて3月2日に開催した「地域研究交流フォーラム」のメインコメンテーターを務めてくださった、保坂久さん(南アルプス市役所 総合政策部 理事・南アルプスIC新産業拠点整備室 室長)が寄稿してくださいました(見出し画像:右手が保坂さん。左手は、地域研究交流センターの箕浦一哉センター長)。

山梨県立大学との関わり

10年ほど前、2010年頃、市の政策研究担当として、過疎が進む芦安地域のまちづくりに取り組んでいるときに、県内大学の地域向け窓口を検索し、県立大の地域研究交流センターのHPを見つけ相談したのが最初でした。前澤哲爾先生、箕浦一哉先生、安達義通先生らが対応してくれました。住民主体の地域活性化の方向や地域の将来を自ら考える市民になるための勉強会などを提案、支援してくださいました。

その後、2013年に、市の人材育成事業「WAKAMONO大学」の運営を山梨県立大学に委託しました。フューチャーセンター構想をテーマにしていた、佐藤文昭先生に巡り合い、委託を打診し、3~40代の市民を対象にした次世代の地域リーダーの人材育成にご理解いただき、研修の企画運営を民間のメディア企業を巻き込み、実施できました。そのほか、数年前から、国際政策学部の授業で年に一度ほどお話しさせて頂いています。市民活動センターの事業に県大生が参加してくれたこともあります。

大学と連携してよかったこと

当時、行政がどっぷりと地域に入って、市民の中に入ってまちづくりを一緒に考える際、「市民参画」という言葉の概念はありました。しかし、実際にどうしたらいいのか、行政に確立された手法はなく、職員にスキルもありませんでした。

その当時、地域研究交流センターから箕浦先生と安達先生が支援してくださることになり、芦安地域で、まちの将来を住民が主体になって考える勉強会の開催から始まりました。

大学に協力を仰ぐことで、ワークショップやファシリテーションなどの技法により、具体的な住民主体の取り組みを実施することができました。私たち職員も、何を大切にするのか、市民に対する行政の在り方を改めて認識させられる機会になりました。

その後、芦安地域では、様々な過疎対策や地域活性化の取り組みに挑戦していますが、地域住民のなかに、自分たちの地域の自分たちの未来は、自分たちが主体となって決めていくのだという気概が備わったように感じます

また、その後の「WAKAMONO大学」では、若手市民がデザイン思考により、自分の思いと地域の課題を解決する考え方や取組み手法を学びました。カリキュラムの提案を、大学がしてくれたことで、内容の濃い事業となり、市内では、学んだ市民が各方面でリーダーとなって、様々な取り組みを活動してくれています。その時のネットワークは協働にも繋がっています。昨年は、若者や女性の声を議会に届けようと、若手議員として30代の女性市議も誕生しました。

県立大学は、地元に根ざしていますので、首都圏のコンサルタントに委託するのと違い、事業が終わったからそれにて終了ということはなく、その後の相談も乗ってもらえます。持続的な取り組みのためには大切なことだと思います。

大学との連携の課題

行政の立場からは、大学に、地域づくり取り組む行政を支援してくれる窓口があるということが知られていないことが挙げられます。県立大学として、県民生活向上のために、集積した知見を還元することを役割とするならば、県民や県民生活を支える行政職員の支援も、合理的な活動になると思います。地域研究交流センターの役割としても、県民やそれを支える行政職員を知見の提供というかたちでの支援は、県民や行政職員にとって、とても心強いものとなるでしょう。

ただ、大学の教員の皆さんも日々の講義や自身の研究などに多忙を極めており、そのような分野にモチベーションを持って取り組めるかどうかも課題です。

また、行政職員の多くは、法定事務や法定受託事務に従事しており、民意の形成や住民主体のまちづくりに関心を持つ、行政職員も少なく、ニーズがまとまるのかも課題です。

大学との連携に関して、将来に期待すること

行政運営の原則として、憲法や法律に定められるよう、市民が主体となってまちづくりを進めることが本質であります。地方においても、政治や行政の都合で進められることが多い現状に、市民と行政の隔たりを感じる市民も多く、不満の高まりを感じています。市民が納得して実施した施策は、成果は小さくても確かな満足感が得られると考えます。

市民主体のまちづくりが、県内各地で進めば、県全体の底上げにつながります。山梨県立大学の地域研究交流センターの役割のひとつに、行政の支援や行政職員の支援を加えていただくことを期待します。

どんな支援ができるのか、どんな連携ができるのか、どんな委託業務ができるのか。例示して委託発注しやすい環境を整えれば、行政側は予算化して、大学に費用負担を生じさせることなく、様々な形での連携が図れるようになるのではないかと思います。

以上が保坂さんからの寄稿です。お忙しいところ、ありがとうございました。いつも大学を応援してくださり、心から感謝を申し上げます。自治体のみなさまの課題解決に、本学を使っていただけるよう、地域研究交流センターとしてできることを考えていきたいと思います。

「地域研究交流フォーラム」の様子はこちらの記事をごらんください。

編集:兼清慎一(地域研究交流センター運営委員)