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遠くに感じていた作家や作品が身近に

2023年7月1日(土)、山梨県立美術館開館45周年を記念して開催された特別展「ミレーと4人の現代作家たち-種にはじまる世界のかたち-」を観覧してきました。山梨県立美術館では、開館時にミレーの代表作《種をまく人》を収蔵して以来、自然豊かな県を象徴するコレクションとしてミレーの作品を収集しており、それらと現代作家の作品がどのように一つの展示を作り上げているのか、観る人それぞれがいろんな感じ方ができるものであると感じました。

作品は現代作家1名ずつの4部屋、各章にわたって展示されていました。私の印象に強く残ったのは第1章、第2章です。

〈第1章 移動・創造〉では、自身の状況に応じて場所を移りながら様々な作品を作り上げてきたミレーと、ファッションデザイナーである山縣良和さんの活動している土地や人々からインスピレーションを得て制作された作品が共に展示されていました。

入ってすぐに目に入るのが様々な人形でした。ミレーのイメージは絵画だったので立体的な作品の並べられた空間にとても驚き、入ってすぐにその世界観に引き込まれるような感覚がしました。多くの作品の中でも特に私が好きだと感じたものを写真に撮ってきました。

ジャン フランソワ・ミレー 《眠れるお針子》 1844年 山梨県立美術館蔵

こちらの作品では奥に見えるミレーの《眠れるお針子》と、手前に置かれた織機、糸がつながっているように感じました。布が織られ、装飾などがされ服になるまでの過程がここでなされているようで、作品全体が物語のある、躍動感あるものに感じました。

ジャン フランソワ・ミレー 《無原罪の聖母》 1858年 山梨県立美術館蔵
山縣良和 《Field Patch Work つくりはかたり、かたりはつくり》 2023年

こちらの作品では、壁に展示されたミレーの《無原罪の聖母》と手前の三体の人形が同時に見られることで、自分がまるで教会にいるかのように感じました。演奏する三体の人形は白いベールを身に着けており、私は最初見たとき結婚式を連想しました。白に統一された服装からはますます教会のような神聖さを感じました。

〈第2章 大地〉では、壁に展示されたミレーの《種をまく人》とともに大きな絵が床、壁一面に広がっていました。

ジャン=フランソワ・ミレー 《種をまく人》 1850年 山梨県立美術館蔵
淺井裕介 《命の寝床》 2023年 作家蔵
淺井裕介 《移動と輸送》 2023年 作家蔵

写真のように、白い部分は作品の上を歩けるようになっており、自分の足で作品を感じることができるようになっています。実際に歩いてみると、この作品の一部になったような感動を味わうことができました。また、そこから見る壁一面の作品はすごく大きく立派で、大地の逞しさを感じるようでした。

山梨県立美術館のホームページによると、開館当初からのコレクションである《種をまく人》は、1850年の発表当初には、まるで土で描かれているようだと評されることもあったそうです。

淺井裕介さんの今回の展示作品では、山梨県内で採取された土が用いられており、実際使用した土がまとめて展示してあるところを見て、その数に驚きました。

まるで土で描かれたかのような絵画と、実際に山梨の土で作られた作品とを共に鑑賞することでミレーの作品を身近に感じることができました。

今回の展示会では、生まれ育った土地も文化も全く異なると思っていたミレーの作品が現代作家たちの作品とともに展示されることによって、私たちの生活とも通じることがあるという気づきがあり、作品を身近に感じることができました。遠いものだと感じていた作品を今までよりも多様な目線から、身近な作品、作家として感じられるようになる展示会だと感じました。

文・写真:山下あすか(山梨県立大学国際政策学部1年)

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