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「有用とも美しいとも思えないものを家のなかに置いてはいけない」

山梨県立美術館で開催されている特別展『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイドまで』を取材させていただきました。山梨県立文学館を訪れたとき、この特別展のチラシを見つけて、かわいらしい模様に惹かれました。

展覧会の挨拶の文章に「機械が人間の労働から創造性を奪う」という言葉があり、現在のAIに職を奪われる危機に瀕している状況と似ているものがあると感じました。

作品を見て、全体的に人間の手によって生み出される繊細さがとてもきれいで印象に残りました。

また、マリーゴールドを緑、向日葵を赤で描いている作品も独特で面白かったです。

ウィリアム・モリス《ひまわり》1879年 モリス商会蔵

序盤に壁に展示されていたのが『リスとナイチンゲール』という作品です。見て、このような大きなものを手作業で仕上げたことに驚きました。

ジョン・ヘンリー・ダール《リスとナイチンゲール》1895年頃 モリス商会蔵

インディゴ染めの展示作品は『兄弟うさぎ』『いちご泥棒』などといったかわいらしいタイトルのものが多く、作品の見た目だけでなく名前も魅力的です。

ウィリアム・モリス《兄弟うさぎ(白)》1882年 モリス商会蔵
ウィリアム・モリス《いちご泥棒》1883年 モリス商会蔵

ガラス作品や装飾品も多く飾られており、細かな装飾や造形がとても綺麗でした。

ウィリアムモリスの『生活の美』より「有用とも美しいとも思えないものを家のなかに置いてはいけない」という文章が展示されていました。

『ステューディオ誌』創刊号の説明にも「実用と美」の融合について記されていました。前にプロダクトデザインについて勉強していた時に、高校の先生から「プロダクトデザインには美しさと実用性を兼ね備えていることが大切」ということを聞きました。展示を見たときにその頃のことを思い出し、懐かしく思うと同時に現在身の回りにあるものは美と実用を兼ね備えているものばかりだと思いました。

今回の展覧会を通して、ウィリアム・モリスに先導されたアーツ・アンド・クラフツ運動の理念への理解を深めることができました。また、その理念は現在も生き続けているのだと感じました。

山梨県立美術館の特別展『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイドまで』は、2024年1月21日まで開催されています。

最後になりましたが、貴重な取材の機会をいただきました山梨県立美術館の皆様、ありがとうございました。

文・写真:秋山美月(山梨県立大学国際政策学部国際コミュニケーション学科1年)

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