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トキメキ、デザイン、色の鮮やかさ、手仕事の細かさ

私たち、山梨県立大学国際政策学部の1年生10名は、山梨県立美術館で開催されている特別展『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』を取材させていただきました。

まず、アーツ・アンド・クラフツをご紹介します。

アーツ・アンド・クラフツは、19世紀にイギリスで活躍したデザイナー、詩人、社会運動家であるウィリアム・モリス(1834~96)が提唱したデザイン運動です。産業革命によって生まれた機械化による粗悪な量産品や、職人の手仕事を軽視する商業主義を批判し、上質なものづくりや天然素材の価値を見直すことで、日常に根ざした多彩な美術工芸品を生み出しました。モリスが提唱したアーツ・アンド・クラフツの精神は同時代の若いデザイナーや建築家たちの共感を呼び、イギリス以外のヨーロッパの国々やアメリカ、さらには日本にまで広がりました。日常生活と芸術を結びつけたアーツ・アンド・クラフツの実践は、現代のデザイン思想にまで引き継がれています。

山梨県立美術館WEBサイトより引用

では、早速、特別展の感想をご紹介します。

今回の美術館訪問を一言で表すと直感とトキメキです。いつもは一つ一つ作品をじっくり見てそこから感じられる「何か」を探していました。しかし今回は直感で気になるもの、惹かれるものを中心に見ていきました。直感で惹かれたものに共通の特徴はありませんでしたが、全て見ていてときめくようなものばかりでした。そのトキメキはお店で服を選んでいる時の感覚に似ていて、とてもワクワクしました。
美術館はゆっくり、じっくり見て回るというイメージがあって、今まで時間をかけてみてきましたが、今回直感的に見てみたら、今までとは違う楽しみ方ができました。
また、作品を見ていると、「これはどんな人が使ってるんだろう」とか「この作品が置かれている部屋の雰囲気はきっとこんな感じだろうな」など作品から想像が膨らんでいって、とても見ていて楽しかったです。(古屋小晴)

『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフラン
ク・ロイド・ライトまで』では、美術品としてではなく、美術品と日用品を組み合わせた庶民の生活に寄り添うようなデザインが魅力的だと思いました。
当時のイギリスのお洒落の概念というと、生活のその上にある上流階級だけが楽しめる発展部分というイメージがあったのですが、庶民の家庭内に見て楽しめる美しさがあるということが素敵だと感じました。特にカーテンやテーブルクロスなどの布地に描かれている草花の模様が生活的ですっきりしたデザインでありながら、他にない特徴的なヨーロッパの模様という印象を受け感動しました。(西尾成樹)

『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』は、自分がデザインの分野に興味があるのもあって、とても楽しかったです。
展示品の多くは花や鳥、枝や葉っぱなど、植物と動物が一緒に描かれていました。でも、その花の開き方や模様に一つとして同じものはありません。枝の曲がり方や葉っぱの形、動物の表情や向きまで凝っていて、自分が持っている植物や動物のイメージとは違う部分もあり、とても興味深かったです。
私が面白いなと思ったのは色使いです。全体的にパキッとした濃い色は使われていなくて、淡い色が多い感じがしました。それもより実物を想像しやすく、さまざまな色が重なりあって赤や青など一言では表せない色が使われているんだなと思いました。
タイルの展示では、一つ一つの模様が可愛いことと色づかいに感心しました。同じ色の系統でも濃淡で少しの違いが出ていたり、深みが感じられました。全ての展示物の模様や色使い、形などデザインでも国や年代で特徴が見られてとても良かったです。(千原夕貴)

『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』では、どんどん見ていくにつれて、次にどんな綺麗なものが見られるのだろうとワクワクしていました。
その中でも一番印象に残ったのがティファニーのブースです。ティファニーなどのハイブランドの今から見るイメージはジュエリーなどのイメージが多いけれど、今回見た展覧会では、カレンダーやペン置きやランプなど今のイメージとは違う作品が飾られていて驚きました。
また、ここで飾られていたグラスや写真立ては金色の作品が多くて、その作品の下に敷かれていたティファニーブルーの台と合わせるととても映えていました。ティファニースタジオの皆さんはそのような色の映え加減を考えてティファニーブルーを作ったのかとなどと推測して、面白いと感じました。
さらに、デザインの発想力にも驚きました。例えば、ティファニーランプでいえば、百合のランプが飾れられていました。私はこれを見たときに、たくさんの花がある中で、なぜ百合にしたんだろうと疑問に感じました。このように、今回の展覧会で、たくさんの鮮やかな作品たちを見て、やはりデザインには色の鮮やかさが必要だなと感じました。(浅原未歩)

アーツ・アンド・クラフツとデザインの作品の中で最も印象的だったことはカーテンや椅子のクッション生地に使われている織物のデザインと、その精妙さです。まだ機械化がそれほど発展していない時代に手作りであの刺繍を生地に縫い込む技術に驚きました。特に「リスとナイチンゲール」という作品は同じ色でも、若干違う色の糸を使用して、光の当たり具合で柄がはっきりと見えてくるデザインになっていてとても綺麗でした。(田邊天梨)

『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』を見て、特に好きだったものをご紹介します。

・タイル:艶感、青のグラデーション
・グラス・コブレット花器・線状模様のボウル
(本体もきれいでしたが、特に影がきれいでした。影の映り方まで計算して作っているのでしょうか。透明のカラー、特に青、ピンクが好きでした)
・アクセサリー:銅とエナメルのブローチ
(化学反応系?青、緑がきれいでした)
・銀製宝石箱:宝石箱って、現代ではあんまりないイメージです。本格的なものを初めて見たかもしれません。箱自体が宝石のようでした。昔の人たちって本当に宝石箱に宝石入れてたのでしょうか…?)
(東海林采音)

『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』では、産業革命で機械化する社会で作られている作品とは違う、手作りの作品では上品さや丁寧さがより目立った印象でした。一番印象に残ってる作品は、『いちご泥棒』という作品です。手作りだから作れる細かい色の変化や同じ鳥でも色が異なったりしていて、すごく丁寧に作られていることが伝わりました。今まで自分は効率的に物作りしたほうがよいという考えでしたが、人が一つ一つ丁寧に作ることに価値があるし、機械が作ったものと比べても細かさが違うと感じました。(頓宮佑輝)

版画なのにあんなに細かい柄が作れることに驚きました。機械などで進歩したけれど、こういう技術は保存されるべきだと思いました。ウィリアム・モリスの「有用とも美しいとも思えないものを家の中に置いてはいけない」という言葉が印象に残っています。そう考えると私の部屋の中にはいらないものがたくさんある気がします。(白倉凪)

山梨県立美術館の特別展『アーツ・アンド・クラフツとデザインーウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』は、2023年1月21日まで開催されています。

最後になりましたが、いつも貴重な取材の機会を提供してくださる山梨県立美術館の皆様に感謝申し上げます。世界が誇るコレクションを持つ山梨県立美術館に、少しでも多くの若い人たちが足を運んでくれるよう、私たちも微力ながら協力させていただきたいと思っています。

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