国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現、医療保険制度改革の推進(令和3年版 厚生労働白書より)
本日は、「第2部 現下の政策課題への対応」の「第7章 国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現」、「第3節 安定的で持続可能な医療保険制度の実現」、「1 医療保険制度改革の推進」を紹介します。
以下、「令和3年版 厚生労働白書」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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第7章 国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現
第3節 安定的で持続可能な医療保険制度の実現
1 医療保険制度改革の推進
我が国は、国民皆保険制度の下で世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現してきた。一方で、今後を展望すると、団塊の世代が全て75歳以上となる2025(令和7)年や、団塊ジュニア世代が高齢期を迎え、支え手の中心となる生産年齢人口の減少が加速する2040(令和22)年頃といった将来の日本社会を見据えた改革が求められている。
「全世代型社会保障改革の方針」(2020(令和2)年12月15日閣議決定)等を踏まえ、現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築するため、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」を、2021(令和3年)の通常国会に提出し、成立した。
法案の主な改正内容は下記(1)から(7)までである。
(1)後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し
後期高齢者医療は、給付費の5割を公費で、4割を現役世代からの後期高齢者支援金で、1割を後期高齢者の保険料で負担する支え合いの仕組みであり、現役世代の理解が不可欠である。
少子高齢化が進み、2022(令和4)年度以降、団塊の世代が後期高齢者となり始めることで、後期高齢者支援金の急増が見込まれる中で、若い世代は貯蓄も少なく住居費・教育費等の他の支出の負担も大きいという事情に鑑みると、後期高齢者であっても負担能力のある方には可能な範囲で負担いただくことにより、後期高齢者支援金の負担を軽減し、若い世代の保険料負担の上昇を少しでも減らしていくことは重要な課題である。
そのため、現役並みの所得がある方以外は1割とされている後期高齢者医療の窓口負担割合について、課税所得が28万円以上かつ年収が200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は後期高齢者の年収合計が320万円以上)の方に限って、2割とする。
一方で、この見直しにより必要な受診が妨げられることがないよう、長期にわたり頻回な受診が必要な患者等への配慮として、外来受診において、施行後3年間、1ヶ月の負担増を最大でも3,000円とする措置を講ずることとしており、所得基準や施行日(2022年10月から2023(令和5)年3月までの各月の初日を想定)等とともに政令で規定する。
(2)傷病手当金の支給期間の通算化
健康保険においては、病気やけがの治療のため働くことができない場合に、報酬の3分の2程度を傷病手当金として支給することとされている。その支給期間については、同一の病気やけがに関して、支給を始めた日から起算して1年6ヶ月を超えない期間とされており、その間に一時的に労務可能となり、傷病手当金が支給されなかった期間についても、1年6ヶ月の期間に含まれる仕組みとされていた。
仕事と治療の両立の観点から、がん治療のために入退院を繰り返す場合などに柔軟に傷病手当金を利用できるようにするため、出勤に伴い不支給となった期間がある場合には、その分の期間を延長して傷病手当金の支給を受けられるよう、支給期間の通算化を行う。
(3)任意継続被保険者制度の見直し
健康保険においては、被保険者が退職した後も、本人の選択によって、引き続き2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者になることができる任意継続被保険者制度が設けられている。
任意継続被保険者の保険料については、「退職した時の標準報酬月額」又は「任意継続被保険者が加入している保険者のすべての被保険者の標準報酬月額の平均に基づく標準報酬月額」のいずれか低い額を基礎とすることとされていたが、それぞれの健康保険組合の実状に応じた柔軟な制度とするため、健康保険組合がその規約で定めた場合には、「退職した時の標準報酬月額」を保険料の基礎とすることも可能とする。
また、任意継続被保険者の生活実態に応じた加入期間の短縮化を支援する観点から、任意継続被保険者からの申請による任意の資格喪失を可能とする。
(4)育児休業中の保険料の免除要件の見直し
育児休業中の社会保険料については、被保険者の経済的負担に配慮して、月末時点で育児休業を取得している場合にはその月の保険料を免除する仕組みが設けられている。
この免除の仕組みについては、月末時点で育児休業を取得している場合にはその月の保険料が免除される一方、月の途中に短期間の育児休業を取得した場合には保険料が免除されないことや、賞与に係る保険料について、実際の賞与の支払に応じて保険料が賦課されているにもかかわらず、月末時点で育児休業を取得している場合にはその月の保険料が免除されることから、賞与月に育児休業の取得が多いといった偏りが生じている可能性があった。
このため、短期の育児休業の取得に対応して、月内に2週間以上の育児休業を取得した
場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については1月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とすることとする。
(5)子どもに係る国民健康保険料等の均等割額の減額措置の導入
国民健康保険制度の保険料(税)は、応益(均等割・平等割)と応能(所得割・資産割)に応じて設定されているが、子育て世帯の経済的負担軽減の観点から、国・地方の取組みとして、未就学児に係る均等割保険料を半分に軽減する。
(6)生涯現役で活躍出来る社会づくりの推進(予防・健康づくりの強化)
現在、40歳以上の者を対象とする特定健診については、労働安全衛生法に基づく事業主健診等の結果の活用が可能である一方、40歳未満の者については、同様の仕組みがない。
このため、生涯を通じた予防・健康づくりに向けて、健診情報等の活用による効率的・効果的な保健事業を推進していくため、40歳未満の者に係る事業主健診等の結果を保険者が事業者等に求めることを可能とする。併せて、被用者保険者等が保存する特定健診等の情報を後期高齢者医療広域連合へ引き継ぐこと等を可能とする。
(7)国民健康保険制度の取組強化
1 財政安定化基金
国民健康保険の財政安定化基金は、国民健康保険の財政運営の安定化を図るため、各都道府県に設置されている。都道府県の財政調整機能の更なる強化の観点から、財政安定化基金に積み立てた剰余金等を、安定的な財政運営のために必要な場合に取り崩し、都道府県の国民健康保険の特別会計に繰り入れることができることとする。
2 都道府県国民健康保険運営方針
都道府県は、安定的な財政運営並びに当該都道府県内の市町村の国民健康保険事業の広域的及び効率的な運営の推進を図るため、都道府県国民健康保険運営方針を定めることとされている。都道府県内の市町村における保険料水準の平準化や、一般会計からの法定外繰入等の解消について、都道府県と市町村における議論を促進し、取組みを進めるため、都道府県国民健康保険運営方針の記載事項として位置付ける。
また、「全世代型社会保障改革の方針」に基づき下記(8)及び(9)の対応を行う。
(8)不妊治療の保険適用
不妊治療については、現在、原因が不明な不妊症に対して行われる体外受精や顕微授精等については、保険適用の対象としていないが、子どもを持ちたいという方々の気持ちに寄り添い、保険適用を早急に実現することとしている。具体的には2021(令和3)年度中に詳細を決定し、2022(令和4)年度当初から保険適用を実現することとし、工程表(図表7-3-1)に基づき、保険適用までの作業を進めていく。
(9)大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大
患者が安心して必要な医療機関を受診できる環境を作るためには、患者自身が医療機関の選択などを適切に理解して医療にかかること(上手な医療のかかり方)が必要である。
日常行う診療はかかりつけ医機能を担う身近な医療機関で受け、必要に応じて紹介を受けて、患者自身の状態にあった他の医療機関を受診し、さらに逆紹介によって身近な医療機関に戻るという流れをより円滑にするため、紹介状を持たない患者が大病院を外来受診した場合に定額負担を求める制度(現行:初診時5,000円・再診時2,500円以上(医科の場合))について、見直しを行うこととしている。
具体的には、対象範囲について、2021(令和3)年の医療法改正により地域の実情に応じて明確化される「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関(紹介患者への外来を基本とする医療機関)のうち一般病床200床以上の病院に拡大するとともに、かかりつけ医機能を担う地域の医療機関を受診せず、あえて紹介状なしで大病院を受診する患者の初・再診については、保険給付の範囲から一定額を控除し、それと同額以上の定額負担を追加的に求めるよう仕組みを拡充することとしており、引き続き検討
を進めていく。
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少子高齢化に伴い、社会全体の医療費の負担についてのあり方を見直すため、2021年に「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立しました。
これにより、以下の改正が行われました。
(1)後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し
(2)傷病手当金の支給期間の通算化
(3)任意継続被保険者制度の見直し
(4)育児休業中の保険料の免除要件の見直し
(5)子どもに係る国民健康保険料等の均等割額の減額措置の導入
(6)生涯現役で活躍出来る社会づくりの推進(予防・健康づくりの強化)
(7)国民健康保険制度の取組強化
(8)不妊治療の保険適用
(9)大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大
「不妊治療の保険適用」はもっと早くやって欲しかったです。
現役世代の負担感、不公平感が軽減され、よりよい状態になるといいですね。
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