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事業承継を通じた企業の成長・発展 M&Aを通じた経営資源の有効活用 2.M&A実施意向 ③売り手としてのM&A実施意向(中小企業白書2021年度版より)

本日は、「第2部 危機を乗り越える力」「第3章 事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」の続きです。
「第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用」より、今回は「2.M&A実施意向 ③売り手としてのM&A実施意向」について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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③売り手としてのM&A実施意向
続いて、売り手としてのM&A実施意向のある企業について詳しく分析していく。
はじめに、第2-3-74図は、後継者有無別に売り手としてのM&A実施意向を見たものである。

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これを見ると、後継者がいない企業において、「売り手意向あり」の割合が高いことが分かる。

次に第2-3-75図は、経営者年齢別に売り手としてのM&A実施意向を見たものである。

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これを見ると、経営者年齢による売り手意向の差は大きくなく、「80代以上」を除く全ての年代において10%前後となっていることが分かる。一方で、「80 代以上」においては売り手としての M&A実施意向のある割合は低く、4.7%となっている。

次に第2-3-76図は、従業員規模別に売り手としてのM&A実施意向を見たものである。

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これを見ると、従業員規模が小さい企業ほど売り手としてのM&A実施意向のある割合が高いことが分かる。

次に第2-3-77図は、売り手としてのM&Aを検討したきっかけや目的について確認したものである。

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「従業員の雇用の維持」や「後継者不在」といった事業承継に関連した目的の割合が高い一方、「事業の成長・発展」も48.3%と高く、約半数の企業が成長のために売り手としてのM&Aを検討していることが分かる。

次に第2-3-78図は、経営者年齢別に売り手としてのM&Aを検討したきっかけや目的について確認したものである。

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世代間の差に着目すると、おおむね経営者年齢が高い企業では「従業員の雇用の維持」や「後継者不在」といった事業承継に関連した目的の割合が高い傾向にあることが分かる。一方で、「事業や株式売却による利益確保」の割合は経営者年齢が若い企業で高い傾向にある。

次に第2-3-79図は、売り手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項について見たものである。

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これを見ると「従業員の雇用維持」が82.7%となっており、ほとんどの経営者が売却・譲渡後の従業員の雇用維持を重視していることが分かる。

次に第2-3-80図は、経営者年齢別に売り手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項について見たものである。

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世代間の差に着目すると、40代以下や50代の若い年代では「経営陣や従業員の人柄や意向」を重視する割合が高く、60代や70代以上の高い年代では「自社名や自社ブランドの存続」を重視する割合が高くなることが分かる。

続いて、第2-3-81図は、売り手としてM&Aを実施する際の障壁について見たものである。

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「経営者としての責任感や後ろめたさ」が最も高く、30.5%となっている。第2-3-53図で見たとおり、売り手としてのM&Aに対するイメージは向上してきているものの、現在でもM&Aの意志決定の際にこうした心理的側面が大きく影響していることが分かる。従業員の雇用維持を重視
する経営者が多いことを考慮すると、特に従業員に対する後ろめたさのような感情がM&Aの障壁になっている可能性が考えられる。また、「相手先(買い手)が見付からない」や「仲介等の手数料が高い」といった実務的な障壁の割合も高く、売り手としてのM&Aを支援する仕組みの更なる充実が期待される。

ここまで見てきたとおり、売り手としてのM&Aを検討する際には従業員の雇用継続に高い関心がある企業が多いが、M&A実施後の雇用継続の状況は実際どのようになっているだろうか。
第2-3-82図は実際にM&Aを実施した企業(買い手企業)に対し、売り手企業の従業員の雇用継続の状況について確認したものである。

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これを見ると、8割以上の企業でM&A実施後も全従業員の雇用を継続していることが分かる。第2-3-68図で見たとおり、人材や技術・ノウハウの獲得を目的にM&Aを実施する企業も多いことを考慮すると、M&A実施後も売り手企業の従業員の雇用が継続されるケースは多いと考えられる。従業員の雇用継続を重視する売り手企業においては、買い手企業のM&Aの目的も見極めつつ、交渉の過程において、従業員の雇用継続の希望を明確に伝えていくことが重要と言える。

また第2-3-83図は同様に売り手企業の経営者の処遇について確認したものである。

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これを見ると、半数以上の企業において、売り手企業の経営者がM&A実施後も何らかの形で事業に関与していることが分かる。

ここまで見てきたとおり、様々な目的で中小企業の売り手としてのM&Aに対する関心が高まっている。事例2-3-10は、後継者不在により廃業も検討していた中で移住者に第三者承継し、事業を継続した企業の事例である。また、事業承継の手段としてだけでなく、自社の成長や再生を目的に売り手としてのM&Aを実施する企業も増えている。事例2-3-11は、生産の効率化や販路拡大、経営基盤の安定化による成長を目的に、M&Aにより他社の子会社となる選択をした企業の事例である。事例2-3-12は、M&Aによる資金面・経営面の支援を受けて経営再建を果たした企業の事例である。
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後継者のいない企業の11.2%が売り手としてのM&A実施を考えています。
経営者の年齢はあまり関係ありませんが、80代以上の経営者が他の年代と比べると売り手としてのM&A意向が他の年代と比べて半分というのはおもしろいです。ここまでくると「死ぬまでやる」、「死んだら廃業する」という覚悟ができている、ということでしょうか。
従業員の規模は小規模な方が売り手意向を持つ比率が高いです。

売り手としてのM&Aを検討した目的としては、「従業員の雇用維持」が最も多く、社員のことを考える中小企業経営者像が透けて見えます。

最近のM&Aの特徴として、実施後も旧経営者が何らかの形で事業に関わるケースが半分以上あることが挙げられます。実際に周りでもそういう事例をよく目にするようになりました。

「日本で一番大切にしたい会社」の著者である法政大学の坂本光司教授は最も大事にしなければならないのは「社員とその家族」であると言っておられます。
M&Aの際に従業員の雇用を一番に考える、そういう中小企業の経営者が多いということは、日本の未来にとってもすばらしいことだと思います。

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