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M&Aによる資金面・経営面の支援を受けて経営再建を果たした企業(中小企業白書2021年度版より)

本日は、「第2部 危機を乗り越える力」「第3章 事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」の続きです。
「第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用」より、今回は「2.M&A実施意向 ③売り手としてのM&A実施意向」より「M&Aによる資金面・経営面の支援を受けて経営再建を果たした企業」の事例について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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M&Aによる資金面・経営面の支援を受けて経営再建を果たした企業
所在地:東京都板橋区
従業員数:18名
資本金:600万円
事業内容:物品賃貸業
株式会社リース東京

ニーズの変化に対応できず債務超過に
東京都板橋区の株式会社リース東京(以下、「リース東京」という。)は、病院で利用されるテレビなどのリース・レンタル業を営む企業。

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2000年代のテレビのブラウン管から液晶モニターへの大転換に対する準備不足などから経営が悪化。債務超過が続いた2010年頃には、当時の社長が自力再建は難しいと判断し、M&Aによる経営再建を考え始めた。2013年3月期の売上高は約7億円に対し、借入金やリース負債など合わせて12億円以上の債務があり、銀行には条件変更に応じてもらうなど厳しい資金繰りとなっていた。

買収側、売却側双方の従業員のコンセンサスを得たM&A
同業他社に働きかけ、伝手を頼って譲渡先を探したが、同社の財務状況を知ると交渉は進展しなかった。そんな中で唯一手を挙げたのが、業務用マットやモップのレンタルを手掛ける日本エンドレス株式会社(以下、「日本エンドレス」という。)だった。「M&Aは、日本エンドレスの財務に大きな影響を与える恐れがあったが、リース東京の過去の決算書を精査し、自分自身で現場を視察して買収を決断した。事業スタイルや人材マネジメントを徹底すればリース東京は有望であると確信した。」と日本エンドレスの成毛義光社長(現リース東京社長兼務)は話す。買収の検討段階では、日本エンドレスの全役職者を順番に送り込み、意見を収集した。一方、リース東京の全社員に対してもヒアリングを行い、買収に賛同する意志を確認。2013年8月、日本エンドレスはリース東京を子会社化した。

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従業員のモチベーション向上とグループ会社とのシナジー効果
リース東京は日本エンドレスからの借入れにより銀行借入を返済し、本社ビルの抵当を外して売却したことで資金繰りは大幅に改善した。本業においても日本エンドレスから営業マンの派遣を受けて営業ノウハウを学び、また徹底的なコスト削減にも努めた。さらに従業員の待遇を改善し、個人目標の設定と月1回の全体会議での成績優秀者表彰を行うなど従業員のモチベーション向上にも注力した。

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その結果、買収2年後の2015年に黒字転換し、2018年には債務超過を解消した。足元では売上高7億円と横ばいながら、業務効率化の効果などにより経常利益1億円を計上できるまでに経営は改善した。また今回のM&Aは日本エンドレスにもメリットをもたらした。日本エンドレスはリース東京の販路を活用して従来取引のなかった医療分野に進出することができ、玄関マットや患者を清拭するおしぼりを納入できるようになるなど、シナジー効果も出てきた。「リース東京はM&Aにより経営改善だけでなく、従業員の待遇面も改善され、モチベーションも向上している。今後も働く人の可能性を伸ばす企業集団を形成できるよう努力する。」と成毛社長は語る。
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業績不振企業がM&Aで見事に立ち直り、買い手側企業との相乗効果を出した好事例です。
本社不動産の売却等、自力でも改善できた部分はありそうですが、第三者が経営改善に関与することで、過去の思い入れを断ち切って実行できたのかもしれません。
みんなで頑張って購入した本社ビルだから、創業の地だから・・・、いろいろな思いがあり、決断できず、茹でガエル状態になっている企業が多いのではないでしょうか。

JALを再建した稲盛さん、たくさんのM&Aを成功させた日本電産の永守さん、日産を再建した場面でのゴーンさんなど、外部から来た経営者が過去のしがらみを断ち切ることで改革が進んだ例は多いですね。

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