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【雑記】武蔵美(ムサビ)の学園祭2024で思ったこと


武蔵美に愛着があるから敢えて物申す

私は幼少期から武蔵野美術大学(武蔵美、ムサビ)に親しみを感じてきました。通っていた東京都杉並区の井荻聖母幼稚園には、武蔵美の教授や教員が絵画や工作を教えてくれる美術教室があり(現在の開講の有無は未確認ですが)、その時間のことは今でも鮮やかに記憶に残っています。卒園後も卒園児クラスに通い、水彩や油絵を学ぶ中で教授や教員との「ご縁」もあって、自然と武蔵美への進学を意識するようになりました。しかし、他の分野への興味が強まって、最終的には他の大学への進学を決意しました。

それでもアートや建築への興味や関心は色あせることなく、大学進学後もさまざまな展示会やイベントに足を運び続けました。武蔵美から一時的に距離ができた感覚はあったものの、東京ミッドタウンのデザイン・ラウンジでのイベントに参加するなどして、デザインへの関わりを保ち続けました。そして現在は武蔵美のキャンパスの近隣に居を構え、その文化や雰囲気を身近に感じながら日々を過ごしています。

芸術祭の作品の傾向

これはあくまで私個人の感想であり、批判の意図は全くありません。一人のファンとして感じたことを、率直に記してみたいと思います。

今年も武蔵美のファンとして先週末に芸術祭を訪れましたが、正直なところ、どこか物足りなさを感じました。特に印象に残ったのは、出展者の姿勢です。芸術祭は、その年によって出展の内容が変わる傾向があって、ある年には建築や造形作品が、また別の年にはライフスタイルに関連する作品が目立つなど、作品の多様性が楽しみのひとつです。こうした作品の場合は、文章による説明が添えられ、作品の意図が伝わりやすくなっています。

しかし、今年はアナログ・デジタルの絵画や映像作品が多く、作品に説明文がないため、来場者自身が作品の意図を汲み取る必要がありました。これにより、作品と観客の間に新たな解釈の自由が生まれる一方で、説明がない分、観る側が意図をつかみにくい場面もあったかもしれません。

姿勢の特徴

教室を出入りした際の感想として、私の主観にはなりますが、学生の姿勢には大きく分けて「積極的に関わろうとするパターン」と「消極的なパターン」があるように感じました。積極的な学生は自ら来場者に話しかけ、作品への思いや制作過程を丁寧に説明していました。一方で、消極的な学生は、来場者からの質問があって初めて口を開くような印象でした。この違いは、作品の理解度や展示全体の雰囲気にも影響を与えているように感じます。

きっかけがあるパターン(ぜひ聞いてください)

  • 来場者にきちんと挨拶をする

  • 作品の背景や思いなど話してくれる

何もしないパターン(聞きたいなら聞くけど)

  • 来場者に対する挨拶や笑顔がほとんど見られない

  • パソコンやタブレットを操作して、来場者に目を向けることが少ない

チャンスロスとサンクコスト

「チャンスロス」は、本来得られるはずの機会を逃すことによって失われる利益や可能性を指し、特に目に見えない形で生じる損失を意味します。一方、「サンクコスト」とは、一度投じた後には取り戻せない時間や資金などの費用を指し、判断や行動を左右する心理的要因ともなり得ます。

話せばわかる(わかるとは言っていない)

アート・芸術の分野は、作品そのものを通して「雰囲気で悟り、感じる」ことが一つのスタイルとされることがあるのかもしれません。これは、個性を重んじるデザイナーズブランドやハイブランドのアパレルショップ、セレクトショップなどで、接客を最小限に留める姿勢が都会的で洗練されたスタイルとして受け入れられていることと、ある意味で共通する部分があるようにも思えます。

しかし、学生にとって芸術祭は、作品を通じて自分の個性を内外に発信する絶好の機会ではないでしょうか。デジタルコミュニケーションが発達する現代では対面でのコミュニケーションが軽視されがちですが、接客をしないことで「コミュニケーションを放棄している」という印象を与えてしまうと、本来の目的が見失われる可能性があります。作品だけでは伝わりきらない意図や思いを直接来場者に伝えることで、作品の理解が一層深まり、強い印象が残る瞬間が生まれるからです。デジタルでの発信が容易な時代にあっても、やはり直接的な対話にはかけがえのない価値があると感じます。

また、芸術祭には様々なバックグラウンドを持つ来場者が訪れ、その中には将来、学生のキャリアに影響を与える可能性のある人物も含まれているかもしれません。美術大学と関係のある業界の関係者だけでなく、純粋にアートやデザインを好む来場者も多く、将来のファンや支持者を獲得できる絶好の機会でもあるはずです。だからこそ、そうしたチャンスが埋もれてしまうのは、非常にもったいなく感じられました

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山名秀典|OFFICE P
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