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【電撃トレード】涌井(楽天)⇄阿部(中日)を考える。

先日、中日ドラゴンズと東北楽天ゴールデンイーグルス間で涌井と阿部のトレードが成立した。様々な意見を目にしたが、中日が阿部を放出したことを疑問視する声が多かったように感じる。このトレードから見えてくる両球団の思惑を考える。

1.中日ドラゴンズ側の意図、思惑を考える

まず阿部の成績を下に示す。

続いて、中日ドラゴンズの現時点での来季、内野を守る可能性がある選手を下に表に示す。

中日ドラゴンズ 内野手 年齢構成

上の通り、阿部は今季素晴らしい成績を残し、レフト、セカンド、サードを高いレベルでこなせるユーティリティ性もチームを救った。現有戦力で阿部より優れた打撃成績を残した選手はビシエドのみであり、ただでさえ得点力不足に悩んだ中日打線から阿部が抜ける影響はとても大きいように思える。他に阿部と同じレベルでセカンドorサードの穴を埋めることができる選手は2022シーズンの成績を見る限りいないように思えるが、なぜ中日が阿部放出に踏み切ったのか、その理由はセカンドをルーキー含む若手の競争枠として開けたい、またルーキーと若手で1年戦い抜くことへの相当な自信の表れ、と考えられる。今年中日はドラフトで二遊間を守れる選手を多く獲得した。セカンドはドラフト2位の村松がかなり期待されており、石垣も確実性がやや欠けるがバックアップとしては十分であろう。またショートは土田が終盤成長を見せ、今季不振ではあったが京田がいる。サードでは高橋周平と石川の競争が考えられる。一定の成績を残した三ツ俣が戦力外となってしまったことからも阿部よりは年齢の若い2人が優先的に起用されることが容易に想像できる。

ではなぜ交換相手が課題の野手でなく、先発の涌井であったのだろうか。涌井は今季怪我があり、一年間稼働できていないが復帰後も球速は健在でエース級ではないがローテを回るということはまだまだやれる、という成績を残した。中日にはエース級の大野柳、更なる飛躍を遂げた小笠原や大ブレイクの高橋、FAを取得も複数年で残留した松葉と先発の枚数は揃っているように思える。だが、この5人以外で今季勝つことが厳しくかった、岡野、福谷、鈴木博らが成績を残せず、勝野や梅津は怪我による離脱が大きかった。今季こそ打球直撃という不運な怪我に見舞われたが、安定してイニングを消化し成績を残せる涌井は来季勝つためには必要な戦力である。

またベテランの涌井を獲得、という就任1年目を最下位で終え、来季が2年目となる立浪監督が先を見据えた動きでなく来季を本気で勝ちにくる動きをしたことは、中日ファンとしてはとても嬉しい。(長打打てる助っ人の補強お願いします)

2.楽天側の意図、思惑を考える

先程同様下に表を示す。

涌井 2016以降の成績
楽天 投手陣

涌井は今季、怪我がありながらもまだ一軍ローテで十分戦える、という成績を残した。楽天は。田中将、岸、則本、(涌井)と実績十分な先発が揃っている。また早川や瀧中も一定の成績は残せるだろう。それは素晴らしいことだが弊害として、他の若手先発に一軍登板のチャンスが回ってこない、ということが起こりやすい。今年ドラフトで投手を多く獲得し、藤井聖、松井友など楽しみな若手が揃っているのにそれでは勿体無く、まだ涌井がやれる内にトレードで出すことで対価も得ることができるということまで考えると涌井の放出は合理的な判断であるとも言える。だが見ての通り、楽天は春先スタートダッシュを決めるもベテラン主体の先発陣が1年間持たず失速して4位に終わってしまった。ベテランが失速してしまった際に未知数の若手にかけることは、石井監督3年目でそろそろ結果が欲しい楽天からすると阿部を放出した中日ほどでないにしろ危険ではあり、サブとして涌井を置いておきたいところではある。

一方阿部の加入は、主力打者に島内、茂木、鈴木大、岡島、西川、辰巳など左打者が多い楽天にとっては大きくセカンド守備に衰えが見え始める浅村をファーストに回せる、と言う観点から見ても大きい。1Bに鈴木大/浅村、2Bに阿部/浅村、3Bに茂木/阿部/(フランコ?)、SSに小深田/山﨑/茂木となり渡辺佳やシーズン途中に横浜から加入した伊藤なども控えるため調子や相性に応じて攻撃力を維持しながらの柔軟な起用を可能になるだろう。また阿部が極端に投手有利なバンテリンドームから離れることで、打撃成績の向上もおおいに期待できる。

3.まとめ

両球団とも、来季の勝利と育成の両立を意識していることが伺える。だが両球団ともこのトレードによって生じた穴は小さくないため、更なるトレードや助っ人外国人補強などで更なる戦力の整備を期待したい。

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