2話 遺物
「で、どっから手ぇつけんの。」
頬杖をついたままのジャックがタバコをくわえながら言う。
場所は星間移動列車のプラットホーム。
本来は禁煙だが、知ったこっちゃねぇ。
怒られなきゃ良いんだよこんなん。
「外出てきちまったし、とりまどっかで調べる?」
「どこを。少なくとも『図書館の星』には無いと思うけど。」
図書館の星。
302番線から行ける星。
『この宇宙すべての本がある』っていう触れ込みだが――。
「『悪書追放政策』だったっけ。あの」
サイアクな政策。
言おうとして、ジャックに止められる。
「しっ。・・・・・・俺んちじゃねーんだからめったなこと言うな。」
辺りを見回すジャック。
幸い、会話は聞かれていなそうだ。
「で、調べるところだけど、アテなら1カ所だけある。」
「マジで?」
「『古きモノの星』。あそこ、旧暦時代の遺産が山ほどあるの。図書館の星にすらない本とかあるし、建物も古い所には貧民街もある。」
「マジかよ。」
貧民街。
これもまた、上によって無いことにされたものの一つだ。
「ってなるとさては、『古きモノの星』って正式名称じゃないな。」
「だーね。正式名称は『廃棄候補34』だ。」
廃棄候補34・・・・・・ああ。
66番線の各駅だと止まるのがある。
「あと――これ、とか。」
そう言って、ヤツは。
謎の黒い円盤を取り出した。
「なんだそれ。」
「なんか溝ある黒い円盤。これ売ってた店主曰く『記録媒体』らしい。」
何一つわかんねぇ。
「それは別に良いけど。俺が調べたい『これ』とどう関係すんの?」
流石に公共の場に血まみれの本を出すのはアレだ。
カバンを指さして訊く。
ジャックは首をすくめた。
「そっちのも旧暦時代だからこっちのがわかりゃなんか良い感じになるかなって。」
「OK、つまり行き当たりばったりだな。」
いつものことだ。
だからイイんだけど。
「どんぐらいかかんの?」
「まー、こっからだと二日だね。」
「折角ならコールドスリープなしで行かね?」
「まーた金欠なのかあんたは。」
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