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終売相次ぐ瓶牛乳、その一方で根強い人気と再評価の兆しも・・・

瓶入り乳製品の終売相次ぐ

乳業メーカーのシンボルとして長年販売されてきた瓶入り乳製品ですが、ここ最近終売のニュースが相次いでいます。2019年4月、明治が「明治フルーツ」の瓶容器での販売を終了すると発表。2021年4月小岩井乳業が、2021年10月には酪王乳業が、販売するすべての瓶入り乳製品を紙パックに切り替えました。SNSでは、「風呂上がりの一杯が…」「時代の流れには勝てなかったか!」などと惜しむ声が続出しました。

終売理由、供給コストと利便性

相次ぐ終売の背景には、大きく2つの理由があると考えます。
1つ目は供給コストが割高になってしまう点です。瓶入り乳製品の製造機器は老朽化しているものが多く、故障も頻発します。事業者数の減少に伴い、新たな機器の供給もままならず、弊社も修復を繰り返しており、そのメンテナンス費がかさんでしまうのです。加えて、そもそもの瓶の仕入れ価格は紙と比較し高価であり(その仕入れ価格を売価に転嫁できていない)、リユースする際の洗浄コスト、配送コストも紙パックと比較した際には、高くついてしまいます。
2つ目の理由は、紙パックと比較した際の利便性にあります。瓶の場合、重い・割れるなど、毎日の暮らしには相性が悪く、紙パックの登場以来、瞬く間に日常使いの頻度が減りました。

それらを象徴するデータが2つあります。
1つ目は乳業メーカーの容器別牛乳生産量割合推移で、農林水産省が毎年発表する「牛乳乳製品統計調査」から引用します。調査によると、平成23年10月の牛乳生産量は瓶が7%で紙パックが83%でしたが、令和2年10月では瓶が3%で紙パックが87%となり、瓶牛乳の生産量割合は9年で半減しています。

2つ目は、給食で提供される瓶牛乳と紙パック牛乳の割合推移で、農林水産省と日本乳業協会の統計を読売新聞がまとめたデータを引用します。データによると、給食用牛乳の容器は1970年度には89%が瓶でしたが、その後80年代に紙パックが逆転し、2019年度は紙パックが85%、瓶は15%になったとのことです。

その一方で根強い人気と再評価の兆しも・・・

年々目にする機会が少なくなってきた瓶牛乳ですが、不要な存在なのか?その答えは「やっぱり瓶で飲む牛乳がおいしい!」と言っていただける、お客様の声が、全てであると考えます。では、そのお客様の声を我々がどのように受け止めているのかを説明いたします。

確かに牛乳を“手軽に飲む”上では、紙パックに劣る瓶容器ですが、“おいしく飲む”上では、最良の手段であると考えます。それは、瓶容器が五感を最大限活かしながら牛乳を味わえるためです。

視覚:瓶容器のシルエットから感じる懐かしい過去の思い出や、思い出がたとえなかったとしても漂う昭和レトロ
聴覚:瓶と瓶がぶつかる音から、早朝の牛乳配達を思い出させる懐かしさ
触覚:手や唇に伝わる瓶容器のひんやりとした感覚
嗅覚:紙栓と牛乳の液面との間に凝縮された芳醇な香り
味覚:紙パックと比較し他の食品のにおいが移らないなど、混じり気のない味わい

久しぶり、あるいは初めての瓶牛乳体験。いつもとはまったく異なる体験がそこにあるのではないでしょうか。つまり、特別な体験を提供するのが瓶容器の存在価値の一つであると考えています。

加えて、昨今SDGsの考え方が世の中に浸透するにつれ、瓶容器への注目が増しています。弊社は、リターナブル瓶の回収方法がおおむね90%を達成するうえで適切な場合に認定される、容器包装リサイクル法第18条認定事業者として、その環境に配慮した事業運営を進めています。おいしさだけではない、環境配慮を両立した持続可能な価値も瓶容器の見直されるべき点であると考えます。

継承される瓶容器、牽引するのはZ世代

「日経トレンディ2021年12月号」で発表された「2021年ヒット商品ベスト30」で、4位に「昭和・平成レトロブーム」が選ばれました。ブームの中心にいたのは、古臭いデザインを「おしゃれ」に感じるZ世代であり、表現の場所として活用されるSNSでは、弊社の瓶入り乳製品も「かわいい!」や「レトロ!」という声とともに、10,000件以上の投稿がなされています。

その他、2021年12月より山村みるくがっこうで販売し始めた山村ガチャ「牛乳瓶ノ蓋」は、そんなZ世代の支持を集め、おかげさまで8,000個(2022年4月現在)を超える売り上げを記録しています。
過去のものとして、忘れ去られるのではなく、次世代のお客様、ひいては社会の価値として振り向いていただけるよう、今後も努めてまいります。


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