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(5)救護施設と脱走

施設での生活に耐えかねて脱走を試みる者がごくたまにいる。

正直刑務所みたいな施錠はされていないので、逃げようと思ったらすぐ逃げれる。
だけど逃げたところで行くところも無いし、ちゃんと人里離れた場所に施設はあるので脱走したところですぐ確保される。

というか現金も通帳も運転免許証も貴重品は全部施設が管理しているので、逃げたところで無駄。
スマホなんか俺たちが持ってるわけないだろ!

たまに認知症のご老人がいなくなったりするので、それは結構みんな本気になって捜索する。

そういった命に係わるケースもあるので、僕たちは施設に入ってから全身写真を撮られ、念のため最寄りの警察に情報提供をされる。

正面、横、後ろ姿、もはや罪人である。

というか脱走しなくても地元のケースワーカーによく相談すれば普通は外で生活できる。
ただ外に出たところで働ける年齢でもないし、そのまま運よく老人ホームに行ったりした方が全然楽なので脱走自体のメリットがほぼ無い。

にもかかわらず不平不満を訴えて自由を求める老人は多い。

3食ご飯が出て屋根付きで寝れて話し相手もいるんだから、それまでの生活を考えたら贅沢だとは思うけど脱走しちゃう。

ちなみに連帯責任とかは一切ない。
脱走したそいつがこっぴどく怒られるだけである。

だから僕たちはたまの脱走兵が現れると、小学校の頃に校庭に入り込んだ野良犬を発見した気分になってみんなでワイワイしてる。

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