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牛肉の生姜焼き

祖母が作ってくれたことが何度かあった。

( 写真なかったので全然関係ない生肉です。ごめんなさい。)


生姜焼きといえば豚肉であるし、牛肉より豚肉の方が生姜焼きの味の良さを引き出せると思っているのだけど。



そして、普段なら豚肉の生姜焼きを作る祖母もこのときだけ限定で牛肉の生姜焼きにしたようだった。





12歳の私と14歳の兄のふたり暮らし。


あの期間は50日程度で2ヶ月にも満たなかったけれど、ふたりとも受験勉強をしていたから突然の親のいない生活になかなか順応できなかった。


家事なんてもちろんできなくて、代わる代わる親戚のおばさんが作り置きのおかずを置きにきた。



そんなときに作ってくれた祖母の牛肉の生姜焼き。

「かわいそうだから。」

と言われたことを、覚えてる。



だから、豚肉じゃなくて牛肉ね。
豪華だから嬉しいでしょ?

って。




それが優しさであることには変わりなかったし、それをちゃんと理解もしていたけれど、素直に受け入れられるほど大人になれない小学生の私はただ苦しくて仕方なかった。


とりあえず口に運んだけど、あの頃食べたごはんの味は全く覚えていない。




味覚が壊れる。

そういう経験を何度もして、ときには泣きながらひとりでごはんを食べた思い出が幾つも。



だから、なのか、不必要なタイミングでの贅沢が怖い。

この贅沢をする理由は何なのか、いちいち考えてしまう。それでしんどくなって、また味覚が壊れる。





価値観が合わない人とは、一緒にたのしくごはんが食べられない。





繊細すぎるのかもな、こういうとこだけ。


でもずっと今でも、無理なこと。

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当時は無理なことを無理だと思えず、記憶まるごと消してきたから。

ようやくちゃんと思い出にできた。


成長してるな、23さい。


読んでいただきありがとうございます。共感していただけていたらうれしいです。吐き出したい心の声を言葉にしています。そうやって思い出にする努力、です。