Yamamoto Mahito

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「コモンズ思考」を発酵させる その5 ブラジル民衆の政治的主体性、創造性----『ブラジルの社会思想』を手がかりに

ラテン・アメリカは社会思想の先進地域 『ブラジルの社会思想』(小池洋一、子安昭子、田村梨花・編、現代企画室、2022)という本を読んでみました。  この本を手かがりにして、ブラジルの民衆の「政治的主体性」「政治的創造性」について考えて見たいと思います。  『ブラジルの社会思想』は20章からなり、ブラジルの社会思想を語る上で重要な20人の人物を選んで、それぞれが果たした役割について論じています。ここでは、その中で、政治と社会運動の文脈で注目すべき人物に焦点を合わせることにし

    • 「コモンズ思考」を発酵させる その4   姜信子『語りと祈り』と八重洋一郎『日毒』をつなぐ

       姜信子『語りと祈り』を読みました。リズムがよく痛快な本です。  姜さんは、旅芸人の「語り」について調べているうちに、自分も「じょろりの旅」を実践する人になりました。  「じょろりの旅」がめぐるのは、水俣、沖縄、済州島、東北------等々です。この本の語りも、こうした所をめぐりながら、姜さんにとって縁の深い場所(そこにまつわる人、物語、詩)を結ぶ線を描き出していきます。  拙文では、姜さんが『語りと祈り』で描く地図に、石垣島の詩人・八重洋一郎さんの詩集『日毒』を割り込ませ

      • 「コモンズ思考」を発酵させる その3    ホモ・エコノミクスvs ホモ・ソシオロジクス  ネオ・リベラリズム批判の深化に向けて

        1. 概要  「コンヴィヴィアリスト宣言」をまとめたアラン・カイエも、『贈与論』のデヴィッド・グレーバーもネオ・リベラストと功利主義への批判を深めるためにマルセル・モース『贈与論』の解読が鍵になるといっている。  しかし、ネオ・リベラリストを支える近代の典型的社会理論(ホッブスとアダム・スミスに代表される)は、利己的個人から出発する思考であり、「人間は本来的に利己的である」という認識を前提にしていることを踏まえると、それに対する批判の土台は「人間は本来的に社会的存在である

        • 「コモンズ思考」を発酵させる・2      D.グレーバーの到達点---カンディオロンクの視点と「3つの自由

          1. 『負債論』から”The Dawn of Everything”へ D.グレーバーが注目を集めるようになったきっけかは、『負債論』の原書の出版のすぐ後でウォール街占拠運動が起きたためだという。グレーバーはこの運動の中心にいて、広場に集まった人々の中には、学資ローンの負担にあえぐ学生や若者が多数いた。広場では、現代社会のさまざまな課題について議論する集まりが延々と重ねられたが、とうぜん負債が重要なテーマの一つになった。『負債論』は、5千年という大きな視野で、貨幣と負債

        「コモンズ思考」を発酵させる その5 ブラジル民衆の政治的主体性、創造性----『ブラジルの社会思想』を手がかりに

        • 「コモンズ思考」を発酵させる その4   姜信子『語りと祈り』と八重洋一郎『日毒』をつなぐ

        • 「コモンズ思考」を発酵させる その3    ホモ・エコノミクスvs ホモ・ソシオロジクス  ネオ・リベラリズム批判の深化に向けて

        • 「コモンズ思考」を発酵させる・2      D.グレーバーの到達点---カンディオロンクの視点と「3つの自由

          「コモンズ思考」を発酵させる

          その1. D.グレーバーの遺作"The Dawn of Everything"について 2月12日にFacebookに投稿したD.グレーバー& D.ヴェングロー”The Dawn of Everything”の紹介をnote にも掲載することにしました。 実は、この紹介をより詳しく拡充したものを拙著『コモンズ思考をマッピングする---ポスト資本主義的ガバナンスへ』の補論として収録しました。 ですから、以下は、補論の簡略版ということに

          「コモンズ思考」を発酵させる