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「偏らない心」?/住民監査請求結果から見る神奈川県山北町行政の歪み

偏らない、こだわらない、とらわれない心。この三つの心で町民の皆さんの信頼を得て、町政運営やらせていただいた」。2022年5月、神奈川県山北町の湯川裕司町長は自身の決起集会で3期12年を振り返り、支援者にこうあいさつした。同年7月の町長選を前にした出来事である。

今回、筆者が実施した町のふるさと納税業務委託に関する住民監査請求の結果、この「三つの心」の信頼が大きく揺らいでいる。

請求を受けた町監査委員はこの契約について「特定の業者のみとの交渉に基づく契約」であり、「法令、規則等において定められた契約における競争性、公正性、透明性等を担保するための規制が順守されていないおそれがある」として町長に速やかに契約手続きの改善を求める意見を付した。

監査結果については神奈川新聞NHK毎日新聞などが報道。この重みは少なくない読者にも届いたはずだ。

しかしなお一点、解き明かされていない事柄がある。
それは、湯川町長と「特定の業者」との関係性だ。

情報開示請求によって得られた資料では、町長が「特定の業者」の設立前から業者側の人間とLINEでやり取りを交わし、町内での事業所開設に関して便宜を図っていたことが分かった。さらに業者設立直後には町職員に対して契約を急がせるなど目に余る肩入れには閉口する。(詳しい経緯は不合理な山北町ふるさと納税業務契約】開示文書から読み解くその背景

また、筆者の開示請求に対して町役場は、業者への業務契約料について黒塗りの資料を出してきたにもかかわらず、新聞社の取材に対しては「委託料は寄附金の15%で、2021年度は390万円を支払った」とあっさり開示。町の「情報公開条例」を平然と無視する体たらくだ。

(「業務委託料」など多くの部分が黒塗りにされた開示文書)

しかし、この「委託料は寄附金の15%」という数字は貴重な情報でもある。大手のふるさと納税ポータルサイトの手数料は寄附額の約10%という報道があることを鑑みると、設立間もなく、何の実績もないこの業者に15%の委託料を支払うのはあまりにも不自然だ。

湯川町長はなぜこんなにも「特定の業者」に「偏り、こだわり、とらわれ」たのか、自らの口で町民に分かりやすく丁寧に説明する責任がある。

また、契約が締結された2021年11月以降、このような問題のある行為を放置し続けている町議会にも相当の責任はある。町行政の「監視役」として、公の場で町長ら町執行部と対峙して質問ができる権利を有しているにもかかわらず、彼らはその職権をなぜ行使しないのか。
この問題を町民に見える形で解明するには、町長だけでなく関係者の出頭や証言を請求でき、虚偽証言を行った場合には罰則規定がある「百条委員会」の設置も選択肢の一つだろう。

この町で「政治家」を名乗る大人たちは、今回の監査結果に対して誠実に向き合うのか。町民は見ている。

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