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2023SS_調べたもの_Soare's gravity

 ロッドは、当たり前ですが一般的にグリップ部から先端までの距離が長いと曲がりやすいのですよね。これはモーメントが腕(ロッド)の長さlと先端荷重(ルアーとジグヘッドの重さ)Pに比例するからです。曲がりやすいと、逆にいうと元の形に戻ろうとする力も働きますから、反発力も大きくなります。つまり、ビヨーンとして、ルアーは遠くの海に。言葉にすると当たり前のことですが、数字でしゃべるならこんな感じです。
 単純にロッドを断面が一様な片持ち梁だと仮定して、各変数を以下のとおりとすると、ルアーをキャストする時の変位はPl^3/3EIです(たぶん)。ここで回転角も同様に求めると、-Pl^2/2EIになります(おそらく)。

長さ = l(Lの小文字)
ルアーとジグヘッドの加重の和 = P
ヤング係数 = E
断面2次モーメント = I

断面が一様なロッドなんてないっていうのは一旦置いておいて、概念的な意味で書きました。
モデル図です。ブラウザでは長さのlと断面2次モーメントのIが分かりづらかったので式も書きました。

 つまり長いといっぱい変位していっぱい回転してビョーンとすることです。これが言いたかったです。

 いちばん最初に買ったロッドが、SHIMANOのSoare BB S610L-Sでした。
 (今も大した変わりはありませんが)全然何にもわからない時に教えてもらって、初めてちゃんとしたロッドを買って、ずーっと使っています。大切な一本で、思い入れがとても深いです。「うぬには長いんじゃない?」と言われますが、前述の式の通り、この長さをうまく使えば、わたしでも遠くに飛ばせるのじゃないかなと思っています。逆に青物ロッドって、重いルアーを投げるのに、なんで長いのかわたしはよく分かっていません。長いと扱いづらいなぁと思っていて、短くても扱う荷重が大きければ飛ぶので、扱いやすさを考えると、もっと短くてもいいのになぁと思います。

 話が逸れました。飛距離についてです。先の通り理論的には、ちゃんと糸を垂らして、キャストするときにビヨーンってすれば、荷重の遠心力で遠くに飛ぶはずでした。でもわたしが投げると飛びません。これは、わたしがロッドの設計意図を理解していないのと、糸から手を離すタイミングがcos45°付近ではないからだと思います。糸から手を離すタイミングがバラバラですし、指を深くかけすぎている気もしていました。第一関節と第二関節の間でひっかけているので、おそらく深いでしょう。ロッドの設計については、素材の弾性や、直径の遷移などが本当はパラメタとしてあると思います。でもそこまで深堀しても、式だけ作って満足しそうなのもあって、一旦やめておきました。そしてワンハンドキャスト。いつ見てもかっこよくて憧れるのですが、わたしはまだできないままです。

 こんなふうにわたしなりに色々考えて、2年間ルアーを投げていました。でもチャーシューメンという呪文に全部持っていかれました。どういうことか。
 わたしは頭の中で、ずっと、色んな式や図や力線を思い浮かべて、キャストする際はルアーを鉛直に静止させてから投げたり、反発力を得るために、びょん!ってしたりしていました。指をかける場所を変えて、モーメントのために右手で押さないで左手を引いたりしていました。1cmでも遠くにルアーを投げたくて、ポジションはいつも柵からゼロ距離です。でもチャーシューメンに全部負けました。つまり、わたしがしてきたこれらの努力よりも、キャストするときに「チャー…シューめぇえ"ん!」って口にするほうが遠くに飛んだということです。
 わたしは今まで何を勉強してきたんだろうと思いました。あんまりちゃんと式を出しても、そもそも体で再現できないだろうと思って、概念的なところまでしか追わなかったので(追えなかったのももちろんあります)、式は全然正確ではなかったと思います。それでも、わたしのキャストにただ必要だったのは、慣れた式や理論ではなく、チャーシューメンという謎の呪文がもたらす勢いであり、リズムであり、タイミングであり、そしてフィジカルでした。
 わたしはこれから一生キャストする度に、毎回チャーシューメンって言うのかなって思っています。本当に呪文です、2つの意味で

 写真はわたしの部屋です。風邪をひいて、釣りにも行けないしそもそも最大15歩くらいしか動けないしで、一週間くらいこの景色だけを見ていました。Uberでローソンからポカリとinゼリーを何本買ったかわかりません。謎の風邪にはお気をつけください。

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