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2022AW_調べたもの_東京湾的概況

 こんにちは、この記事を読む人は、東京湾について少なからず興味をお持ちと思います。トピックごとにまとめたので、是非ご参考としてください。え、釣りは?って思われるかもしれませんが、毎回釣れないのでこんなことをしています。

特徴

周囲を大規模工業地帯に囲まれた閉塞性海域
 東京湾のように周囲を陸に囲まれた海の地形を、閉塞性海域と言います。外海との海水の交換が行われにくいという特徴があります。このため、水質が悪化しやすいです。加えて京浜工業地帯からの排水を受け止める東京湾では、赤潮や青潮(貧酸素塊)が頻発しています。青潮は表層と下層の海水温の差異により、それらの層で海水の交換が行われないことを大きな原因として発生します。だから表層の水温が高くなる夏に多く話題を聞くのですね。青潮は魚にとって酸欠を引き起こす要因となります。活性が下がることからも、青潮が発生している時には釣りの効率が下がります。青潮の発生状況については、この辺りの情報が詳しいです(メッシュが2W単位なのでそこだけ注意です)。

大きさと形状

鹿児島湾にも似てるモアイ型の形状
 東京湾の湾口は20.9 km、閉鎖度指標は1.78、面積は1380.n k㎡で、湾口の最大水深は700.n mです(面積と最大水深については、有効数字を揃えるために小数点第一位をnとしました)。
 閉鎖度指標とは、先ほどの閉塞性海域の度合いを数字で表したものです。湾口部の断面積に対する湾内断面積の比で求められ、値が大きいほど閉鎖度が高いことを示します。式はシンプルで以下の通りです。東京湾の値を当てはめると1.78が導かれます。これだけの大きさを持つ湾としては、この値は日本の中では比較的大きいと思います。ちなみに鹿児島湾に似ているというのは以前界隈で話題になっていました。わたしは左を向いたモアイの横顔っぽくてかわいいなと思っています。はぁ好き。

京都府 > 各年度の水質測定計画並びにその結果 > 用語解説 > (参考)閉鎖度指標

海水の循環

滞留する海水
 閉塞した東京湾において、海水はどれくらい出入りがあるか気になりました。出入りする水量が少なければ、先に申した京浜工業地帯をはじめとする、都市部からの排水を長い時間抱えたままであることになります。
 さて、その海水の交換量です。理論的には湾内の平均塩分と淡水交換量、東京湾の体積から求めることができます。式を載せようと思いましたが、理解するのに手と関数電卓で40分くらいかかったし、核心でもないのでやめておきます。結果は以下のグラフです。グラフを見ると、最も短い滞留時間は9月の15.6日、最も長い滞留時間は1月の38.5日です。冬季に滞留時間が長くなる傾向がありますが、3月と5月に滞留時間が短いことが気になりました。東京湾に流入する河川には、雪解け水を持つ水系が多くないだろうことから、この年は一時的にたくさん雨が降ったからかしらと思いました。(引用元の論文には記載がありませんでした。これは個人的な推測です)。
 以前、外海からの海水の流入量と塩分を冬と夏で比較して、冬は海水の交換が活発ではないとしたことがありましたが、概ね一致する結果となりました。やったー。一瞬、釣りのハイシーズンが秋なのって海水の循環がなめらかに行われることも寄与するかと思ったのですが、外海でもそう聞くのであんまり関係なさそうですね。世の中こんなものです。

2002年東京湾広域環境調査に基づく東京湾の滞留時間の季節変化 図-29

海底地形

東京海底谷と海に沈む河川
 久里浜より南(湾口付近)から急深の地形となり、そこには700mの深海パラダイスが広がります。これを東京海底谷と言います。その手前にはS字型に凹部が確認できます。これは前に東京湾の湾奥全域が陸であったころ、今でいう多摩川、荒川、江戸川等が合流して太平洋に注いでいた大きな川の跡です。これは前回の記事にも書いた日本の貿易を支える地形だと思っています。この深さが、湾口から横浜や横須賀への船による進入を容易にしました。横浜と横須賀が港として発達を始めた地形的な要因とされています。個人的にはそんな昔にそんな深さを必要とした船があったとは思えなかったのですが、下図の通り他が極端に浅ければ納得できます。さらに湾奥に進むと水深が-15mより浅くなっていきます。こんなに浅ければ、海水の交換が容易でないことも理解できます。浅いところにところどころ見える直線的な航路は人間が作りました。

海上保安庁 海洋情報部 東京湾の海底をのぞいてみよう 付図2-1
海上保安庁 海洋情報部 東京湾の海底をのぞいてみよう 付図2-2

海底地質

粘土と砂と石からできたやわらかな海底
 溶岩とか、珊瑚は東京湾の海底地質を構成する要素としては少ないです。やっと三浦沖にちょっとあるくらいでしょうか。左下の赤いカニみたいなiconが溶岩です。東京湾の多くを占める浅い海域は、河川からの土砂の流入で作られました。自然に埋まっていったのですね。だからマクロで見ると勾配が滑らかで、穏やかな海です。こういうところも好きです(どうでもいいですが下図のモアイみが秀逸です)。

東京湾海洋概況 海底地質

 海の状況が見たいとき、以下のサイトがおすすめです。海しるっていいます。本当になんでも見れる。ちょっと重くなりますが、レイヤー重ね放題ですし(もう一度言いますが本当になんでも見れますし)、なんでもできます。地形、地質はもとより気象や生態系についても見ることができます。作図もできます。さらにAPIも提供していて、なんというか複雑な幸せを感じました。

 本当は一次産業の活用とか、工業的にどう利用されているかとかも書きたかったのですが、すでに長すぎるので諦めました。これは次回以降の課題とします。


出典
1)日本の閉鎖性海域88ヶ所_029東京湾,公益財団法人国際エメックスセンター
2)東京湾溶存酸素情報,神奈川県
3)2002年東京湾広域環境調査に基づく東京湾の滞留時間の季節変化,国総研資料No.169,高尾敏幸,岡田知也,中山恵介,古川恵太,2002
4)東京湾の海底をのぞいてみよう,海上保安庁 海洋情報部,2006
5)東京湾南部の海底地形・地質構造調査,水路部技報 Vol 17,岩淵 洋, 雪松 隆雄,岸本 秀人,1997
6)海洋状況表示システム,海しる,2023

 写真は東京湾に注ぐ堀割川の河口付近です。ナンバーを隠した車の人たちに絡まれたりで治安にちょっと緊張感ありましたし、そもそもとんでもなく寒かったのですが、東京っぽくてかっこいいでしょ(横浜も東京カウントしてすみませんでした)。

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