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カネ恋シナリオブック 綻びを繕うほどに愛着が湧くということ

TBSドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」シナリオブックを読んだ感想を綴っています。ネタバレを極力書かないようにしているつもりですが、漏れ出ている部分もあるかもしれません。シナリオブックをまだ読めない・これから読む方は本記事を読み進めるのを控えていただいた方が良いかもしれません。

TBSドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」の最終話が10月6日に放送されて、シナリオブックが自分の手元に届いたのは22日。

その間の待ち遠しさたるや。TVドラマのシナリオブック自体買ったの初めてで。
多くの人がそうであるように、私も未放送の全8話の残りシナリオを読み、本来のストーリーを追体験したかったのです。

届いたその日、夜中読み始めて午前4時近くまで一気に読みました。
初めは少しずつ味わい読み進めようかなと思いましたが、読み始めたら止まりませんでした。勝手に繰り広げられるカネ恋の世界。文字を追うだけで、そこに立ち上る玲子と慶太のやりとり。

テレビ放送の4話分で(実際三浦春馬さんの収録分で言えば3話分ですが)、これだけでも松岡茉優さん演ずる玲子さんと春馬くん演ずる慶太の残像を思い浮かべながら、シナリオブックを読み進められる。
その発見にささやかな喜びを感じました。

全体を通して、最後まで可愛らしい作品でした。
テレビ放送の第4話で号泣しすぎて忘れてましたが、これはラブコメディなのです。シナリオブックの第8話のラストシーンなんて視聴者皆ニコニコ顔で観終えるのが容易に想像つきます。

本来の物語を知ることができてよかった。
世に出してくださったことに感謝します。

叶うことなら全8話、演ずる彼らを観たかった・・もちろん言うまでもありません。読む前からわかっていること、それでも読みながら、読み終わった後も何度も反芻します。

反芻すればするほど、この作品が他のドラマとは違う記憶の残り方をする、稀有な作品になるのですよね。

読んで改めてわかったこともあります。
それはテレビ放送の最終話(第4話)がやはり素晴らしかった、ということです。

あの7月18日から、この作品がどうなるのか(お蔵入りになってしまうのか、代役を立てるのか等)騒然とする中、急遽話を書き換えて放送することが決定され。
話が破綻しても致し方ない、、という視聴者の予測を鮮やかに飛び越えた、第4話に仕上がっていました。

今回シナリオブックを読んで、テレビ放送の第4話が、実際のシナリオ各話のエッセンスを取り出しうまく紡いで生まれたものだということがわかりました。

慶太の両親である富彦(草刈正雄さん)と菜々子(キムラ緑子さん)の2人の関係性が、慶太と玲子の関係性とリンクする・・といった件、テレビ放送で富彦が玲子に語った言葉は、本来の物語ではここと繋がっていたのか、、とか。

玲子が父親に会いに伊豆に向かう時一緒にいたのは、オリジナルでは慶太ですが、テレビ放送では北村匠海さん演ずるガッキーと猿彦(慶太のペットロボット)が玲子にお供していました。
電車で2人が猿彦を間に挟んで座って会話するシーンは本来はなかったはずのシーンですが、私はあのショットがとても好きです。何度観てもあそこにガッキーがいてくれてよかった(北村さんがいてくれてよかった)と妙に安堵してしまうのです。

テレビ放送第4話と、シナリオ4〜8話を行きつ戻りつ違いを味わうという新たな楽しみ方も、この本によって受け取ることができました。

制作サイドにとって前代未聞といえる非常事態、フラットな状態を保つことも大変だったと心中お察しします。
その状況下で見事に特別版を書き上げてくださった脚本家の大島里美さんのご尽力に敬意を表します。

この作品に訪れた最大の危機であり、大きな綻びを、
キャストと制作者の皆さんが懸命に繕うことであの第4話が生まれた。
その綻びを取り繕う様ごと、私はこの作品を大切にしたいと思います。

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