解放された者

題名にもある通り、そうです、私が隔離から解放された者、大和です。
日曜日、雨、七時。
木曜日の十四時には解放され、ホテルを追い出される。ホテルの隔離代のお会計を済ませ、バイバイと見送られる。約十二日間の隔離を終える。正直、毎日の記憶なんてなく、だいたいこの時間は何をしてたな、みたいな記憶しかない。毎日楽しみにしていたご飯も隔離中盤ごろから、次第に食欲をなくし、残すことが多くなり、あまり食えなくなっていたし、実は最初から最後まで、下痢だった。
途中からは、飯を食べた後には、腹を下す感じで、少しずつ痩せていった。ジャガイモとささみときゅうりのサラダや魚の揚げ物、鶏肉の時は、無理にでも腹に温かい内に一度に十分以内に食べきり、何とか消化を遅くするので乗り切った。それでも一時間後には腸は下す準備を始める。することが全くないので、違和感が気になって仕方なく、仕方なくトイレに行くと、食べたものが水のように流れ出る。悲しい事この上なし。生きるとはなんだろうか。と鏡に映った自分を見つめ問うてばかり。何を無駄に消費しているのだろうか。
ロシアとの時差を考えるようになり、何の映画が今日あるのか等を、記憶しだした。テレビをつけたら、まず主要の四つのチャンネルをザッピング。いい映画があれば、それを眺め、なければ、ヨウツベ。サムスンのいいテレビで、インターネットに繋げば、ヨウツベも楽々見れた。
とはいえ、ヨウツベも二日目には飽きており、次に出てくるのは、アニマルプラネットか自然の番組(題名を忘れてしまった)。その他は、ジョージアのテレビ局をつけたりもしていたし、テレビを付けないで、ラジオだけの日もあった。
それに加え、ジョージア語の勉強もしてると何かと時間は潰せた。
それにしても、贅沢な時間だった。十二日で三百ドル。
インフルの検査と同じものを受け、陰性だったため、二日早まり、追い出された。こちらも喜んで出ていきますが。
あそこはいい刑務所だった。ご飯も毎日だいたい決まった時間にやって来る。ドアの前にポツンと置かれている。一日三食と、水五百mlが二本。
たまにご飯と一緒にケーキもやって来る。そんな時は、夜まで取っておいて、映画と一緒に見る。腹の調子が良い時だけだが。
夜景も見飽き(そんな綺麗な夜景でもないが。)、朝焼けを拝んで眠るようになった。朝焼けは意外と綺麗で、南の山々が朝日に燃え、清々しい時が多かった。ホテルを出る前日は眠れず、当日の十二時ごろからまだかまだかと部屋の扉の覗き穴を何度も覗き込んだ。胃がキリキリとしだすほどだった。
昼飯が十四時にやってきて、朝には出れると聞いた私は、焦り始め、ジッとできなくなっていた。防護服を着たお姉さんがやってきて、声色高く、「貴方は自由に出れるわよ」の言葉には、感謝感激だった。
ホテルを出ると、まず太陽と車の排気ガスでシャバを感じた。アムスから必死こいて持ってきた荷物も、その時は全然重たくなく、でかいリュックサックを背負ってスキップ出来るほどだった。

周りのジョージア人は、家族と抱き合い感動の再開を迎えていた。
あまりにあっさりとした隔離生活の終わりで、私は始めはボケてしまった。落ち着き始めたのは、渦の家に到着し、その夜飲み歩いた最後だろうか。いや、その翌々日かもしれない。いやまだかもしれない。
まあ何とかタクシーを捕まえ、渦の家まで辿り着く。渦の家には先輩達が待っていてくれて、よく帰って来たと迎えてくれた。有難い。そして、枯れてしゃがれてしまった声と、
運んできた十キロの味噌と、ビーマー、製麺機を渡し、そのほか、預かったお土産も先輩に受け渡し、無事、仕事を一つ終えた。
長かった仕事をここで終えても、また新たな仕事が次に待ち構えている。とはいえ、しっかり休んでいる。

ジョージア語は未だ難しく、会話もスムーズにはいかない。ドイツ語も二年前と比べてレベルが上がったものの、やはり完ぺきではないし、たまに詰まる。
今はドイツ語よりジョージア語。毎日、出来る範囲で勉強はしているが、進みが遅いのか。
それにしても、五か月のブランクがまた惜しいと思っている。このブランクどう取り返すか。とはいえ、この言葉の感覚を失ってはいないと感じる。日本語もドイツ語も、ジョージア語も英語でさえも結局音楽だと思う。楽しんでどう流すか。
とはいえ、もっと頭がパンクするまで揉まれないと。パンクしてからが勝負だと思っている。

最近、夢がとても鮮明で、楽しい夢が多い。ほぼ毎日、眠りから覚めにくい。久しぶりだし、よく眠れているのは良い事なのだが、やはり心は落ち着いていないのか、ふわふわとした心持で、下腹部も地味に緊張している。

そして、忙しく生かせて頂いており、大変有り難い。
お金もあと三四ヶ月で底をつきそうだが、どうなるだろうか。
頑張れるのだろうか。日本にはいつ帰るのだろうか。そんなこともたまには考えますが、今のところ、とにかく先のことはその時考えることにして、今をとりあえず生きています。
もちろん、先のこともしっかりたまには考えないといけませんが。


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