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あの日見上げた空に

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1997年の夏から「あの日見上げた空に」という写真と言葉集のサイトを続けていました。あの時の言葉集、若かった私を思い出したり、書き直したり、追加したり。
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さあちゃんへ (1989年冬)

  さあちゃん さあちゃんがうまれた日の夜 ママはなんだか眠れなくて 病院の小さな窓から 夜の空を眺めていました 外は、冷たい1月だから おつきさまも おほしさまも でんしんばしらも かちんかちんに凍りつきそうな そんな夜だったけど ママはなんだかあったかくて ぽかぽかしていて そのうえすごくどきどきしていて この不思議な気持ちはなんだろう、って となりで眠っているさあちゃんに たずねてみたりしたのだけれど すやすや眠ってばっかりのさあちゃんは なんにもおしえてくれない

生きる、ということ

生きるということ 朝目が覚めるということ コーヒーの香りに迎えられること 光を感じること 空を見上げること 走る風の音に心が震えること あなたと会えてよかったと思えること 次に会う約束をすること あたかたなお布団に包まれて眠ること そしてまた明日の朝も必ず目を覚ますこと 大切なひとに おはよう、って言うこと

涙の数星の数

今夜寂しかったら うちにおいでよ 灯りつけておくから 朝までつけておくから あったかいお茶を入れて 朝までここにいるから 手の甲をさすっても 痛いよね あきらめるには 大きすぎるよね 祈りはいつだって 届かないよね 空を仰いでも 星に願っても はかなく崩れて消えるよね 落ちる涙の数 降りしきるこの空の星の数 永遠のようでも ちゃんと終わりがあるのかな 笑顔に戻れる日が ちゃんとくるのかな      

好きとか嫌いとか

好きとか 嫌いとか なければ楽かな でもないとつまんないな

雨の葉

雨の葉 さらさらと流れて 夜を包んで 夢の香 ゆらゆらと曖昧で 恋を溶かした 夏のはじめの あの夜も雨だったね ざわざわと 風にひやかされたね

雨の臭いがする あの日、私の心を刺した あの人の言葉を思い出して悲しくなる 悲しくなっても 不思議と心地よいのはなぜだろう 色んな想いが 絡まり合って 答えの出ない日曜日

反発する力

たとえば私たちは 友達とぶつかったり 親に反抗してみたり 夫婦喧嘩をしたりするけど 心の真ん中のところは 動かないからすぐ仲直りできる 愛する人とぶつかるという事は 案外心の外側だけのことなんだな 真ん中がぶれなければ 少しの間揺れたとしても 反発した分、激しくまた元に戻る

見えるもの、見えないもの​​

ここのところ、 本当に一生懸命に考えていることがある 本当に大事だと思うものを 見失わずに「見る」ためには ある意味、覚悟が必要だってこと。 美しいものはまわりに星の数ほどあるけれど 真の美しさは姿かたちではないってこと。 愛する人の手で作られるものこそ この世で一番美しいものであるということ。 そして、それは 簡単には見えない、ということ。

積み重ねる

形から入らず 小さくても、弱くても 本質をこつこつと積み重ねる これからしばらくの間は 静かに私の内側と向き合いたい たぶん、これが いま、私がすべきことだから

主役脇役​​

主人が額縁を作っている 中に入れる絵はまだ決まっていない 額縁が主役なのだ 主役脇役 力を出し切れた者が勝ち

あいのうた

こころにある風景と 目の前の風景が たとえ少し違っていたとしても 君がいて 僕がいて あの日と同じ風が吹いているならば それもよしとしようか 描いてきた生活と 僕たちの生活が たとえ少しかけ離れたものだとしても 君が笑い 僕が歌い 今夜もやわらかな気持ちでいられるならば それもよしとしようか あいのうたをうたおう 君の目を見てうたおう 僕の唇にのせてうたおう 明日も明後日も その先もずっと 君と僕が手をつないで歩いていけるように    

君の住む街で君を想う たとえ会えないとしても

繋いだ手を 決して 離さないで

星になってもまだ、私の足もとにいつもいる。