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大学院生の勉強をするぞ

大学院生の勉強(修士1年の自分の考え)

 自分は大学院修士1年生です。普通の大学からそのまま大学院に進学しているので、今研究している有機化学の分野に関しては、まだまだ修行の身です。
 大学院の勉強は、教科書を読むだけではありません。日々更新される自分の分野の最新情報を耳に入れるため、また、教科書ではまだ掲載されていないような知識を得るために、論文を読みます。
 論文にはまだ世の中に全く公表されていないような情報がたくさん書かれています。コロナウイルスの治療薬な開発につながるような内容や、新薬の情報を得ることもできます。(ちなみに自分の研究分野はコロナとはあまり関係ないです。わかりやすい例として挙げました。)

目標

 今月(すでに15日ですが)は、自分が研究をおこなっている有機化学の分野の論文を5報読もうと思っています。読み終えたら感想を書きます。もちろん、勝手に内容を晒すとダメなので、概要(無料で見れる範囲)と感想を書きます。
 自分に論文を読むモチベを与えること、そして、人に説明するというプロセスが、自分の理解の程度を客観的に測る材料になると考えています。

記事を読んでいただける方にお願い

 修士1年の理解力で読んでいるので、間違いもあるかもしれません。自分なりに頑張ろうと思いますので、あくまで読んでくださる方も参考までに。
 あと、論文の英語タイトルをそのまま載せると、論文を検索した方が誤ってこのブログを開いてしまう可能性が(限りなくゼロですが)あるかと思いますので、英語タイトルをDeepLで日本語にしたものを載せます。

早速1報目

ねじれ分子内電荷移動(TICT)プロセスによる蛍光体の発光を精密に制御するための一般的な設計戦略 (東京大学)

 東京大学の研究室が2022年に報告した論文で、Twisted Intramolecular Charge Transfer (TICT)という現象を利用した蛍光分子の設計に関して書かれた論文でした。
 蛍光分子は、生物を使った薬学実験(薬を開発するプロセスでは必須です!)をする際に利用される分子です。理科の実験で出てきた、細胞の核を染色する酢酸オルセイン溶液って聞き覚えのある方多いと思うのですが、それの仲間だと思ってください。

ねじれ分子内電荷移動

 本論文では、蛍光分子のスイッチのオンオフを、「ねじれ分子内電化移動」という現象により制御しています。
 ねじれ分子内電荷移動は、分子がエネルギーを吸収した後、蛍光を発するのではなく、分子内の結合の回転によりエネルギー的な安定化が起こる現象です。論文中に登場する蛍光分子は、ねじれ分子内電荷移を起こすと蛍光を出さず、逆にねじれに関与する結合が回転できないときには蛍光特性を発します。

何の役に立つ

理科の実験で細胞の観察の際に、核を染色する酢酸オルセイン溶液を使ったことがある方も多いでしょう。細胞の観察には、細胞を観察しやすくする薬品が必要です。
今回登場した蛍光分子は、特定のタンパク質に結合すると、ねじれ分子内電荷移動が起こらなくなり、蛍光特性を持つようになります。つまり、常に蛍光特性を有するのではなく、特定の条件下を満たす細胞のみ蛍光分子が光って見えるのです。
薬学の研究において、細胞の観察は重要です。薬が効いたときにタンパク質が発現するなら、この蛍光分子を使えば薬がどの程度効いているのか、視覚的に判断することができます。蛍光は定量的に観測できますので、薬品の効き目を数値化することも可能かと思います。
 難しい話ですがまとめると、薬品の開発に関わる実験において活躍することが期待される分子の設計手法を開発したということになります。

感想

 Twisted Intramolecular Charge Transfer (TICT)という現象は初耳だったので、ちゃんと勉強します。有機化学は、現象を分子レベルで理解できる、新たな機能性分子を設計するという面白さがあり、この論文はその面白さが存分に発揮されているなと思い感動しました!
   また、TICTが起きていることを証明するために、分子内の置換基や立体構造を精密に制御する実験がなされていたのが勉強になりました。
 まだまだ知らない知識が多いので、頑張って身につけていきます。


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