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「ヤマケイの本」全文公開

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本noteで公開している、全文公開記事をまとめました。
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記事一覧

食洗機から泡が吹きだして止まらない!途方に暮れた私を救った”化学的で冴えた”やり方

たとえば家の掃除をする時も、私たちは驚くほどたくさんの化学反応を経験しています。ケイト博士は土曜の朝、キッチンから掃除を始めるそうです。 SNSで話題沸騰の新刊『さぁ、化学に目覚めよう 世界の見え方が変わる特別講義』(ケイト・ビバードーフ:著、梶山あゆみ:訳)。テキサス大学で文系の学生に向けた授業を担当し、自他ともに認める化学オタクの著者(表紙写真で火を噴いている人物)が、高校から大学の教養レベルで学ぶ化学の基本原理と、日常にあふれる化学反応をわかりやすくユーモアたっぷりに

広大な”狼屋敷”で犬、狼、ジャッカル、狐、ハイエナと暮らした「犬奇人」のすご過ぎる人生【動画つき】

 戦前から戦後にかけて、狼をはじめとするイヌ科動物を独学で研究し、雑誌『動物文学』を立ち上げた平岩米吉という人物がいました。  動物行動学の父・ローレンツに先駆けて自宅の庭で犬、狼、ジャッカル、狐、ハイエナと暮らしながら動物を徹底的に観察。「シートン動物記」「バンビ」といった動物文学を初めて日本に紹介し、フィラリアの治療開発に私財と心血を注ぎました。この、知られざる奇人であり偉人を描き切った痛快ノンフィクション、ヤマケイ文庫『愛犬王 平岩米吉』(片野ゆか著)から「プロローグ」

【アメリカの化学者が教える】マーガリン等に含まれるトランス脂肪酸は、なぜ動脈硬化のリスクを上げるのか?

SNSで話題沸騰の新刊『さぁ、化学に目覚めよう 世界の見え方が変わる特別講義』(ケイト・ビバードーフ:著、梶山あゆみ:訳)。テキサス大学で文系の学生に向けた授業を担当し、自他ともに認める化学オタクの著者(表紙写真で火を噴いている人物)が、高校から大学の教養レベルで学ぶ化学の基本原理と、日常にあふれる化学反応をわかりやすくユーモアたっぷりに語る一冊です。 私たちが毎日の食事でとっている油脂。これは、脂肪酸とグリセリンという分子からできています。脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

ボクの体はスポンジやガラスです

人間の体の約60%は水だといわれています。ですが体を絞ったら水が滴り落ちてくるなんてことはありえませんね。一方、海綿動物ではそんなことがありえます。海の綿、英語では「スポンジ」と呼ばれています。何を隠そう私たちが日頃使っている食器を洗ったり体を洗ったりするスポンジは、真のスポンジである海綿動物の体をマネしてつくられたものです。多くのカイメンは繊維状タンパク質でできた吸水性抜群な体の中に、小さな針状の骨片をたくさんもっています。 さて、ほねなしと言っているのに骨片? と疑問に

宇宙人よりも宇宙人な、地球の生きものたち

海には不思議な形、驚くような生き方をしている動物がたくさんいます。その多くが無脊椎動物と呼ばれる、背骨をもたない動物です。私たち人間を含む哺乳類や鳥、魚などの、一般的に人が〝動物〞だと思っている生きもの(脊椎動物)は、背中に体を支える背骨(脊椎)をもっています。その脊椎をもたないのが無脊椎動物。背骨がないので、私は親しみを込めて〝ほねなし〞と呼んでいます。 一般によく知られるものとしては、イカ、ヒトデ、クラゲ、カニなどがいます。でも知られているほねなしなんてほんのわずか。み

ヒトは自分自身のやっていることを案外わかっていない

(以前の記事はこちらから) 生きものの情報処理 単細胞には脳がないのにどうやって情報処理をするのでしょうか? 問題を解く賢さはいったいどこにあるのでしょうか? 生きものの問題解決能力やその方法については、まだまだわからないことだらけです。 自分自身のことですら、よく考えてみるとわからなくなることがあります。読者の皆さんは友だちの顔を見て、「あっ、だれだれだ」とすぐわかりますが、どうやって顔の特徴を捉えているのか他人に説明できますか? 説明できないけれど、間違えることなく

「単細胞」は愚かさの代名詞? じつは驚くべきことをやっている!

「一寸の虫にも五分の魂」といいまして、虫けらごときにも生きとし生けるものとしての「生」があることを忘れてはならぬとされています。普段顧みぬほど小さい生きものにも、実際必死の生活があります。人類の歴史など足下にも及ばぬほど長い歴史を背負っています。何千万年、何億年という地質年代をずっと生き抜いてきているのですから、その営みはさぞ力強かろうと思われます。決して侮ることなどできないように思われます。果たしてその力強さとはいかばかりなのでしょうか? 最も単純な生物はたった一つの細胞

生き物の知的な行動はどう生まれるか? に迫る本

生きものの知性を探る旅 この本は、「生きものが知的であるとは一体どういうことだろうか?」という疑問について、粘菌という単細胞生物の振る舞いを見ながら、なるべく根源的なところを探した研究を紹介しています。「知的」といってるのに、「単細胞生物」を対象としていることが、すでに問題提起的です。「単細胞」という言葉にはあまり賢くないという意味がありますが、どうもそうとは言い切れないようです。このことが、この本の出発点になっています。 知的というと、まずはヒトの能力を思うのがふつうで

映画「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修者が語る、アイヌの物語のとてつもない魅力

 映画「ゴールデンカムイ」の公開が始まりました! マンガから一貫して同作のアイヌ語監修を務める千葉大学名誉教授・中川裕氏が"名著"として推薦しているのが、ヤマケイ文庫『アイヌと神々の物語』です。アイヌ語研究の第一人者、故・萱野茂氏が、祖母や村のフチから聞き集めたアイヌと神々の38の話を収録した一冊。本書から、中川先生書き下ろしの序文を公開します。 河合隼雄氏、推薦! 「『ウウェペケレ』は『昔話』そして『お互いの心が洗われる』ことを意味する。人間の生死について深く考えようとす

「12頭のシャチが流氷に閉じ込められた!」…極寒の中での救出、シャチの親子を襲った悲劇とは?

 日本一クジラを解剖してきた研究者・田島木綿子さんの著書『海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること』。海獣学者として世界中を飛び回って解剖調査を行い、国立科学博物館の研究員として標本作製に励む七転八倒の日々と、クジラやイルカ、アザラシやジュゴンなど海の哺乳類たちの驚きの生態と工夫を凝らした生き方を紹介する一冊です。本書から、内容の一部を公開します。写真:©Uni Yoshikazu,2005 北海道から届いた衝撃の一報  2005年2月7日、国立科

牧野富太郎博士が美しさに感嘆したイチ押しのお花畑とは?

白馬岳のお花畑 私もだいぶ方々の高山に登ったが、日光は女峯(にょほう)や男体山(なんたいさん)はどうかというと、外輪的で比較的高山植物も少ないが白根山(しらねさん)は多い。八ヶ岳は登るに都合の良い高山で八ヶ岳むぐら、八ヶ岳しのぶなどは日本ではこの山のみに限る高山植物である。ひげはりすげ等も観賞には適せぬが植物学上珍しいものでこれもこの山に限られている。高山植物についての知識を得ようと思えば信州の白馬岳(しろうまだけ)に登るがよい。 東京から行くとすれば上野駅から長野行の汽

牧野富太郎博士が恐山の林で歌い、踊った理由

ニギリタケの握り甲斐 ニギリタケは、Lepiota procera Quel. なる今日の学名、およびAgaricus procerus Scop.(種名のprocera は丈高き義)の旧学名を有し、俗にParasol Mushroomと呼び、広く欧洲にも北米にも産する食用菌の一種である。そしてニギリタケとは握り蕈の意であるが、握るにしては、その茎、即ち蕈柄が小さくてあまり握り栄えがしない。それで、私はこの菌を武州飯能山で採ったとき、「ニギリタケ、握り甲斐なき細さかな」と吟

牧野富太郎少年が見つけた「白くて丸い怪物」の正体とは?

狐のヘダマ 幼少の頃、私は郷里佐川の附近の山へ、よく山遊びにいった。ある時、うす暗いシイの林の中をかさかさと落葉を踏んで歩いていると、可笑しなものが目についた。フットボールほどもある白い丸い玉が、落葉の間から頭を出していたのだ。 私は「何だろう」と思って恐る恐るこれに近寄っていった。しかし、別に動きだしたりもせず、じっとしている。 「ははあ、これはキノコの化物だな」と私は直感した。そして、この白い大きな玉を手で撫でてみた。すると、これはその肌ざわりからいって、まさにキノ

地球と生命の5億年の旅を叶える一冊!『素晴らしき別世界』の「はじめに」公開。

◎過去を知ることは、未来を知ること アラスカを渡る巨大なマンモスの群れ、泥地にダイヤモンド模様の高木が屹立し、翼竜が水中に獲物を見つけて湖にダイブ! 海には透明で巨大なガラス建築が広がり、海底では最古の熱水噴出孔動物ヤマンカシアが生きている――。本書で描かれる地球の光景は、まるで別世界です。 『素晴らしき別世界 地球と生命の5億年』トーマス・ハリデイ/著、水谷淳/訳(山と溪谷社)の発刊を記念して、本書冒頭の「はしがき」を全文公開いたします。 “素晴らしき別世界”へ、よう