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ねこじゃらし(Ver.2) #六〇〇

 ねこじゃらしの話をしたい。娘が保育園のころ、毎朝のねこじゃらしを持って登園していた。

 なんでねこじゃらしを持って保育園に行っていたかというと、なにか、自分のわがままを通したかったんだと思う。なんというか、保育園には本当は行きたくなかったし、お母さんの帰りが遅かったし、でも、それはできないから、なにか、自分で決めたことをやりたくて、それがねこじゃらしだったんじゃないかと思う。ねこじゃらしを持って保育園に行って、ふたつ下のクラスの先生に毎朝プレゼントしていた。先生は、いつも喜んで受け取ってくれていた。あの先生にも、保育園の他の先生にも、たいへんお世話になった。

 季節が流れて、みちばたのねこじゃらしが、だんだん少なくなっていった。道ごとに除草作業が入っていった。ねこじゃらしは刈っても刈っても新たに生えてきていたけれど、だんだんなくなっていくから、「ねこじゃらしがなくなったらどうしようか」という話をした。代わりに別の植物を持っていきたいらしい。それで、クローバーもどきみたいな、三つ葉の葉っぱを娘が選んだ。もう、すっかり冬だった。ねこじゃらしの季節は長い。長いなぁ。

 今年の7月から、みちばたにねこじゃらしがわさわさしていた。こんなに暑いのに秋の気配を感じさせる。ねこじゃらし、秋の季語だと知っているのは、私が俳句をやっていたからだろうか。俳句をやっていたからって、ぺんぺん草、クローバー、ねこじゃらし辺りは、年中みかける植物だと思っていた。娘のおかげで、冬から春にかけて、ねこじゃらしの姿が見えなくなることに気づいたんだ。

#ねこじゃらし
#エッセイ
#六〇〇

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