"群青日棋"内山女流初段⑥「良い手を指されて分からなくなっちゃって」

局面は激しい玉頭戦。
息もつかせぬ間に難解な終盤戦へ雪崩れ込んでいく…

前回指了図から▲24歩△12玉と引いた局面。
福間の剣先が内山の喉に突きつけられているが…?

内山は少し前からこの局面をイメージしていた。「凌げているかなと。」
結論から言えばその感覚は正しく、一気に後手玉を寄せる手立ては難しかったようだ。

▲23角△21玉▲54と、
待望のと金の活用だが、この場合は△42金引がピッタリで堅い。

先手が後手玉に直接迫る手は難しく、
後手優勢がハッキリしてきたが…

ちなみに▲23角の王手を決めずに▲54となら、△26歩が厳しかった。局面はどうやら内山が優勢のようだ。

しかしここで福間は簡単には土俵を割らない…
▲34飛!と虎の子の飛車をねじ込んだのが福間渾身の勝負手。

福間渾身の一手。
玉頭戦は厚みが命。
飛車を犠牲にしてでも、手厚い金を取って逆に馬を作るのは非常に大きい。


内山は「見えていなかった。良い手を指されてわからなくなっちゃいました。」と正直に語る。…

この手の話をしている時の内山がどこか楽しそうで、嬉しそうですらあったのが、筆者には印象的だった。
読みに無い手を指されて厳しい場面に直面した事を反省するよりも、純粋に素晴らしい一手に出会えた感動を享受しているように見えた。

福間の勝負手に、内山も激しい勝負手で切り返していく。

▲34飛△同金▲同角成△26歩▲同香△36飛▲44馬…
そこで△25香!が気合溢れる勝負手で、筆者は感心したのだが、

内山渾身の切り返し!
気合溢れる香車のカチコミ…
だが、本人はいたって冷静だ。

内山は
「全然気合型ではないですよ(笑)」
あくまで局面をフラットに見ての香車のカチコミのようだ。

しかし、この勝負手で福間に傾きかけた流れをまた引き戻せたのは事実であろう。
正解は▲同香だったようだが、本譜は▲同桂。筆者の感覚的にも、▲同香は△26銀が怖すぎると思う…。

▲同桂△37銀▲27玉△26銀成▲同馬△同飛▲同玉△69角▲36歩△34香▲38飛△25桂▲23香△22桂▲65銀…

手順が長くなり恐縮だが、
内山は玉周りに駒を増やす事を重視し、
福間は駒を蓄えつつ受けて一刀両断の詰みを狙っている

手順が長くなり恐縮だが、ハイレベルな難しい攻防が続いている。
手順中△34香が見えにくい手で感心した。本譜のように進んだ際に▲34桂の攻めを防いでいる。

福間の指し方も棋風が出ていて、
福間は駒台に駒を蓄えるのが好きな棋風だと思う。一気に詰まず能力にも自信を持っているのだろう。
▲65銀もその棋風が出た手で、▲13桂からの一刀両断を狙っていて非常に鋭い。

しかし…

この最終盤、残り8分の状況で内山にチャンスが来ている。
凄く良い手があるので皆さまも是非考えて頂きたい…!

(続く)

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