甲斐日向さん

※毎度の言い訳になりますが、深夜に書いています

1ヶ月ほど前、自粛が続いて寂しさも募る頃、一人でとぼとぼと暗い川の前を散歩していた時だったか、甲斐日向さんから電話があったのは。

久しぶりで嬉しかったが、1000円借りがある事を思い出して慌てて謝った。
電話口の甲斐さんは笑っていたが、前に同じような金額を迅速に返してくれた事も思い出してますます申し訳無くなった。

「仕事の相談なんですが、」から始まってハキハキと一通り話してもらって、二つ返事で協力させて頂いた。
改めてというか、甲斐さんがこの世界で築いている信用の大きさを感じる。久しぶりに話したのに、受ける一手としか思えなかったのだから。

あらかじめ書いておくと、甲斐さんと僕はそんなに深い関係ではなく、あくまで盤上での関係でしか無いのだが、こうして仕事を依頼してもらえた事は嬉しいし、僕にとってはずっと「カッコいい先輩」である。

三段リーグでは5度戦って僕から見て2勝3敗。
4度目の対戦の前、甲斐さんには三間飛車は通用しないなと思った。悩んだ末に相手の研究を外しに行って先手中飛車を採用した。
結果は完敗。得意戦法での真っ向勝負を避けての惨敗はみじめだった。

5度目の対戦は三間飛車をやるしか無かった。真っ向勝負。仕掛けからお互い一歩も引かない将棋だった。難解な形勢が続いたが、終盤の秒読みで指運が味方した。感想戦は三段リーグにしては長めにやってもらったと思う。

結果的にその期に僕は四段になり、甲斐さんは奨励会を退会する。甲斐さんが三段リーグと公式戦で残した高い勝率と、自分のそれまでの三段リーグの成績を比べてしまって、気持ちの置き場が無かった。
こちらの勝手な感情だが、棋士として恥ずかしくない生き方をしようと思わせてくれる存在だ。

甲斐さんが甲斐日向将棋教室を開いたという情報は、twitterで知った。そのあまりの行動の速さに本当に驚いた。退会されてから1ヶ月ほどしか経っていなかった筈だ。

間違いなく人気教室になるんだろうな、と思った。微力でも宣伝したい。
しかしリツイートボタンをなかなか押せなかった。無理もない。あれから一言も話していなかったのだから。

それからすぐ、僕がねこまど将棋教室さんで「三間飛車講座」をやらせて頂く事が決まった。新四段としてはなかなか依頼してもらえない仕事だと思った。有り難かったし、ファンの方に知って頂くチャンスと思ったが、90分一人喋りで30人集める、と聞いて卒倒しそうになった。埋まる訳が無くないですか?

初の講座の仕事に向けて不安しかない時期のある朝、twitterを開くと甲斐さんのコメント付きリツイートが目に入った。
「彼の三間愛は本物なので必ず面白い講座になると思います!! 三間飛車は勝ち方が気持ち良すぎる戦法です。」
(今回、改めてこのツイートを検索した。日付は2018.11.02とある。)

甲斐さんは軽い気持ちで書かれたかも知れないが、これは本当に嬉しかった。この時の感動は忘れられない。あの対局から一言も話してないのである。戦い合った将棋指しからの言葉は何より説得力がある。甲斐さんの言葉を見て、自分の三間愛は本物なんだな、と思った。
この言葉のお陰で自信を持って講座の仕事を全うできた。

この日以来、僕は気持ち悪いくらいに甲斐さんのツイートをリツイートするようになった。誰が何と言おうと僕はtwitterが好きだ。素晴らしいじゃないかこのSNS。

それから、もう1年半が経っているのか。改めて速い。
甲斐さんと甲斐日向将棋教室の活動は常に気になっている。
https://kai-shougi.com/

オシャレ過ぎませんか? このサイト。
色々の意味で将棋の普及の先頭を走っていかれるのだろうな、と思っています。
私が今回協力させて頂いているのはこちらだ。
https://kai-shougi.com/news-professional-lesson/
プロフェッショナルレッスンというのはなんだか気恥ずかしい。
1コマ60分で最大二面指し、持ち時間各15分60秒で指導対局を行います。
(早く終わり過ぎた場合は時間内にもう1局)
局後はzoomを利用しての感想戦も行います。今の時期本当に貴重です。

渡辺和史さん、室谷由紀さん、和田あきさんという豪華すぎるラインナップも甲斐日向将棋教室ならではだろう。

このメンバーで1コマ5000円とはなんという破格…
私だけ値段を下げたいくらいだが、そうもいかない。値段に負けないよう、いい指導をしていきたい。

長くなってしまった。ただ甲斐日向将棋教室の宣伝をしたかったのだが… 色々と感情が乗っかってしまった。

甲斐さんと食事に行ったことは数えるほどしかない。でも1回だけ2人でカラオケに行ったのはささやかな自慢だ。
歌い慣れているであろうorange rangeのイケナイ太陽を聴いて、本当にイケナイ人なんだなぁと思ったものだ。

自粛期間が終わったら、どこかご飯に行きましょう!


山本博志


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