"群青日棋"内山女流初段②「穴熊の戦いがあんまり好きじゃないんです(笑)」

2.「穴熊の戦いがあんまり好きじゃないんです(笑)」
2023年の9月18日に行われた、岡田美術館杯第50期女流名人戦挑戦者決定リーグ、福間香奈女流五冠ー内山あや女流初段の一戦。
福間は4-0、内山は2-2という状況で迎えた本局は、まさにリーグ中盤の山場ともいえるシチュエーションだった。
筆者がまず注目したのは内山の力みの無い自然体の駒組み。「後手番だし、序盤は付いていく感じかなと。」王者相手にも堂々たる姿勢。

じっくりとした序盤戦。

銀冠や左美濃を好んで指す印象があったので、"銀冠が好き?"と聞くと、
「元々は急戦党だったんです。でも急戦だけだと中々勝ちづらくて。いきなり真逆の穴熊を指すよりも、中間みたいな方が良いかなって。
それと、穴熊の戦いがあんまり好きじゃないんです(笑)、攻めの銀まで自陣に引っ張る感じになるじゃないですか、あれがなんかバランス悪いな〜って思うんですよね。」
筆者は内山を中学生の頃から知っていて、「渋めの相矢倉が好きな、強い女の子がいる」という評判を耳にしていた。
純文学的相矢倉を好む内山の感性では、穴熊よりも、銀を攻めに使って盤面全体の戦いになりやすい銀冠や左美濃の方が性に合っているという事だろう。
本局もまさにそのような展開に進もうとしている。福間の端からの仕掛けに内山が全て堂々と対応して、戦いの火蓋が切られた。(続く)

指了図は▲9五同角まで

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