"群青日棋"内山女流初段④「ここはまぁ、△35歩かなって」

前回指了図、福間の▲47金に対して、内山が指した自慢の一手は…?

「この手は感触が良かった」と内山。

じっと"△67歩"。
これが味わい深い好手だ。▲68飛を消しているのが直接の意味だが、内山の読みは更に深い。
「この後間違いなく△95飛と切って質駒の角を手に入れる事になるなと思って。
その時に△67歩を置いてあれば、△69
角が急所のラインになると思った。」

こういった事をパッとイメージする能力は、いわゆる、"構図を描く"という能力だと思う。
この能力は一朝一夕には中々身に付かない。暗記で身に付くようなものでもなく、内山がプロの世界で揉まれてきた中で会得しつつある"プロの呼吸"である。

少し進み、内山がイメージした△69角はすぐに盤上に表れた。
昼食休憩明け、
福間が22分の熟考で攻め合いの意思を決める▲63とを着手した…

▲63と。
昼食休憩を挟んでいるので、実際は1時間近い熟考での決断だ。

「ここはすごく面白い局面だったみたいなんです!
普通に△78角成で飛車を取っても、本譜の△35歩で勝負しても、殆ど評価値が変わらないみたいで。それほど難解な局面だったんですね♫」
内山は難解な局面を前にすると、目を輝かせて明るい口調になるので、こちらもなんだか嬉しくなる。
これこそが強くなる若者の特徴だ。

…しかしその割にはたった3分の考慮で超強気な△35歩を着手している!!
"もっと考えたくならなかった?"と聞くと、
「ここはまぁ、△35歩かなって。」
とあっさり言われたので笑ってしまった。
この能天気さが彼女の面白さであり、妙に底知れない才能を感じてしまうのだ。

指了図は△35歩!
火を吹くような攻め合いの一手だが、内山は3分で着手した!

△35歩を着手してしまうとここからは一気に激しい攻め合いになだれ込む事は必至…
いよいよ白熱の終盤戦だ。(続く)

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