スロットにハマり掛けた話 前編

※少し前に書き上がったものの、後編を盛り上げる自信が無くなりボツになった文章です。笑


自粛というと聞こえがいいが、家でひたすら緩やかに過ごす毎日である。体調が回復して、時間の経過の中に穏やかな幸福感を見つけることも増えて、ありがたい限りだが、何かが足りないと思う事もある。 一言でいえば、"刺激"が足りないのだ。

手軽な刺激を求めて、将棋ウォーズを開き赤いボタンを押す。〜数分後〜 「悔しいじゃろう?その悔し涙を力に変えるんじゃ。」爺さんの声が聞こえる。
うぐぐぐぐ。 将棋に刺激を求めるのはあんまり良くないかも知れないなぁ。

そうだ。 
ギャンブルである。刺激といえばギャンブル。世を見渡せば、いや見渡さなくとも将棋界の身の回りには、ギャンブルに刺激を求めて楽しんでいる人も多い。身銭を切って打つ博打は、どうやらたまらなく楽しいらしい。誠也は僕が三段の時から競馬を楽しそうにやっていたが、僕を誘うのは僕がプロになってからと決めていたらしい。それだけ、のめり込む危険があるということだったのだろう。

ただ、僕自身はギャンブルが苦手な方である。昔から、ご飯代を賭けた大富豪や卓球で、仲間に負かされ過ぎて、ギャンブルというもので勝てるイメージが湧かないのである。勝負は将棋だけでお腹いっぱいである。

そんな僕が、危うくスロットの魅力に引き込まれそうになった3日間の話をしたい。

まだコロナ前の2019年11月、体調を崩して休養をして、回復してきていた僕は、予定を休ませて頂いたお陰で時間に余裕のある日々を送っていた。

その日は久々に髪を切りに美容院を予約していた。遅い時間で、最後の枠だった。
ルーズな僕は、予約した時間に5分遅れて美容院に到着した。まぁ切ってもらえるかなと甘く考えていたが、一人だけ居た店員さんは、「もう閉店準備がありますので今日は切れません。」
とピシャリと僕に宣告した。

今冷静に思い返すと普通に僕が悪いのだが、その日の僕は、なんて冷たい仕打ちなんだ!と物凄くイライラして、すっかり頭に血が上ってしまった。

すぐに店を出て、大股でズカズカ歩く。ああイライラする。なんっでやねん。頭の中でなぜか大阪弁が駆け巡る。

そんな時、僕の目の前にキラキラと輝く建物が飛び込んできた。普段は見向きもせずに通り過ぎるその建物の中に、僕は吸い込まれるように入っていった。いわゆるパチスロである。

パチンコは打ち方が分からなかったが、スロットは三段の頃に、遠征の仕事で某先輩三段に打ち方を教わった事があった。もう一人は遊び人の某くんで、福岡の仕事だったかな。その時はジャグラーの打ち方を教わって、あっという間に千円札が吸い込まれていって呆気に取られた記憶があった。
話が脱線するが、福岡は楽しかったなぁ。その後のボウリングも負けた僕だったが、夜に先輩がガールズバーに連れて行ってくれたのだ。これも勿論初めてだった。ワニワニパニックはこうやって遊ぶのか。と感動した記憶がある。全然上手く話せなくて、水ばかり飲んでた気がするが、カラオケがあったので誤魔化せた。お世辞でも褒められると楽しいのである。
それからしばらくして、同じメンバーで池袋で打った時は、まぐれで当たって1万円近く勝って、某くんと二人で、先輩に焼肉をご馳走したんだっけ。
確か、自分のスロット経験はこの2回のみだったと思う。目押しも先輩に手伝ってもらうレベルで、どの台が良いとかも殆ど分からなかった。

そんな僕が一人であの異様な空間に入っていく訳だから、物凄くドキドキした。うるさすぎる音と、煙草の匂いも不思議と心地良かった。

唯一分かる、スロット界の親のような存在であるジャグラーを探そうとして店内を進むと、まるで運命かのように「凪のあすから」というアニメの台が目に入った。これだ!!!

それは僕が超好きなアニメだった。あの井出さんも名作と太鼓判を押す作品なので、良かったら見ていただきたい。ちなみに美海推しです。

この台なら、もし負けても全然楽しめるな。そんな風に気持ちに保険を掛けつつ、僕は勇躍、スロット台に座ったのだった。
(後編に続く。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?