今年の夏は暑すぎる。なんとかならないものか。
毎年言っているような気もするが、去年はこんなに暑くはなかった。もっと過ごしやすかったはずだ。
今年だけが異様に暑く感じる。
いま、今この瞬間叫びたい。暑いいい!! と。

そして、そんな自分にこの格言を贈りたい。「喉元過ぎれば熱さ忘れる。」

転じて、「夏過ぎれば暑さ忘れる。」とも言えるだろうか。今この瞬間、暑すぎるという心の叫びを書き残しておく事には、少なからず意味があると思う。

去年の夏を思い返すと、今年ほどは暑くなかったはずだが、蜂には刺された。

ん? はい。 蜂に刺されたのだ。

その日の私は黒いシャツを着ていた。全く、真夏に黒いシャツなど着るものではない。

近くにいた小さい女の子が「蜂!!」と叫んだ次の瞬間には、私の手首には激痛が走っていた。この痛みは初めての感覚で、びっくりした。手首に小さな爆発が起きたようだった。

「痛ったああ!」 22歳だったか23歳だったか忘れたが、成人男性としては情けない声をあげてしまった。

すぐに救護室に連れて行ってもらう。経験ない事なので、少量の毒が回ったのか気持ち悪くなってめまいがした時には、死ぬのかな? と思った。

アレルギーがある事を伝えると、大事をとって救急車を呼ぶことになった。ここは自然溢れる場所で、病院からは少し遠かった。
今思えば全く大げさだったかも知れないのだが、こういう事は丁寧にするに限ると思うので、周りの方に親切に対応して頂いてとても感謝している。

こうして、人生初の救急車にライド・オンする事となった。この業界の偉大な先輩達は、こういう場合、酒を飲み過ぎて酩酊して乗るというシチュエーションが大半なのではないかと伝え聞いているが、私の場合は意識がハッキリしているので、「おお、こんな感じなのか」「救急のお姉さん、優しい。」「めっちゃ脈拍聞かれる…」「あれ、意外とガタガタ揺れるな。」などと、具体的な感想を述べる事が出来る。
この仕事に携わられている方の真摯さや、丁寧さを垣間見る事が出来た。

病院に着き、一本注射を打ってもらい、少し横になった。思わず何人かの友人に連絡してしまった。


その日のうちに帰宅する事になり、何事も無かったのだが、その少し後に順位戦があった。

午前中、少し休みに行くと先輩棋士がニコニコしながら「蜂に刺されたんだって?」と話し掛けてくれた。
噂話は蜂の毒より回るのが早い。

「はい、救急車乗りました。」
「大丈夫? 2回目刺されると危ないらしいから気を付けなよ。」
「そうらしいですね… 降級点1ですかね。」
「ん?(笑)」
「蜂の降級点です。」

この日は順位戦だったので本当に降級点を持っている人も居て、どっときた。

先日、朝日杯の時に黒ずくめのスーツで対局した。特に誰からも反応は無かったが、前からやってみたかったのだ。
しかし、顔も黒いからなんだか怖い感じになっていたし、蜂の降級点を持っている事を思うと、やるもんではなかった。笑
冬になったら挑戦してみたい。

こうして文章を書いていると、少し涼しくなってきた気がする。何かに集中すると良いのだろうか?

皆さま、この夏はくれぐれも身体をご自愛して下さいね。


山本博志


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