2021年


12月27日。年末である。ここ数日ぐっと寒くなって、「寒い」と口にする回数が増えた。澄んだ空気を全身に浴びて、ぶるぶると身体を震わせる。不思議と悪い気分ではない。

2021年。今年は特に何も成し遂げる事が出来なかった。ただ、少しずつ自分を取り戻す事が出来た。将棋はあまり勝っていないが、焦りもそんなにない。来年からは結構勝つ気がしている。

昨年末は、夜は寝れない、2日に1回はほぼ動けない、動画も集中して観れないのでインスタのリールみたいな動画しか観れない。という状態だった。

それが少しずつ夜寝れるようになり、やがて2日連続で予定を入れれるようになり、ついには2時間以上の映画を観れるようになった。今の僕は「愛を読むひと」を観て泣くこともできる。全く涙ぐましい。


昨日、地元の深川棋遊会支部に1年ぶりの指導対局に行った。8歳の頃からの仲である朝比奈会長を見て、思わず抱きつきそうになったが、コロナなので自制した。70歳台の頑固オヤジが棋遊会を守っている間、25歳の僕は1年間休んでいたのである。
「お久しぶりです。すみません長々とお休みして。」「いいんだいいんだ、体調はもう大丈夫か?ゆっくり治せよ。」
どう考えても立場が逆である…
「そういや詰将棋解いてんぞ。朝日新聞の。ありゃ難しいよ、もっと簡単なのにしてくれ。」「11手詰だから頑張れば解けるよ。」「途中までは解けたんだがなぁ。」
新聞詰将棋の仕事を頂けて本当に良かったと思った瞬間だった。朝日新聞さん、ありがとうございます。いつか観戦記も書いてみたいです。

久々の指導対局は楽しかった。体調を崩しながら行っていた時は正直全然楽しくなくて、愛想も悪かったと思う。真っ当な感情を取り戻した自分に本当に安堵した。

ちびっ子達も顔なじみの子が多かった。また1年間将棋を続けてくれたんだなぁ。中には驚く事もあった。

「久しぶり!先生1年間休んじゃって。
強くなったか?」
「実はぼくも10ヶ月休んでたんです。」
「ええっ、大変だね。」「でも入院しながら、本読んだりして将棋してました。」「そっかぁ。」
手合いが4枚落ちから2枚落ちになっていた。今日は緩めてあげなきゃな、なんて考えていたのが大間違い。本当に強くなっていて、緩める隙もなく完璧な指し回しで負かされて、ただただ感動した。
「強くなったねえ!」と言うと、伏目がちに嬉しそうに笑ってくれた。
プロ棋士の自分にとって素敵な思い出になったあの1局が、彼にとっても記憶に残る指導対局になっていれば嬉しい。

棋遊会期待のエースちびっ子も1年見ないうちに五段になっていて、たまげた。ふっくらほっぺが少しシュッとして、すっかり将棋指しの顔つきになっていた。
時間が空いたので角落ちで指導対局をする事に。1対1である。

初手… 2二飛! そこから振り飛車穴熊へ。終盤も長考。少し本気を出し過ぎたかな?笑
彼はプロを目指すのだろうか?すくすく育って欲しいなと思う。


忘年会も20時頃までご一緒させて頂いた。同席していた飯島先生のように来年は僕も活躍したいです、と言うと、どこからともなく「よっ、凄四!!」と掛け声が。四段では、「凄くないですか?」の名セリフはまだまだ似合わない。
カラオケ好きの馬田さん、付き合えなくてごめんなさい。もっと元気ハツラツになったら、深い時間まで付き合わせて下さい!


2021年、自分自身の身体と心に向き合った一年だった。またまだこれからだが、のろまな自分が生きていくのに丁度いいペースを、少しずつ掴めて来た気がする。
"自分は今、楽しいか?元気か?"
単純な事がしばしば分からなくなり、おざなりになる。楽しいはずの場面で身体がしんどいという矛盾は辛い。

時間が掛かったが、2021年の終わりに、地元の方々の暖かみを素直に喜べる自分を確認できた。とにかくほっとした。
うん。いい1年だったんじゃないかな。

年末年始、全力でのんびりを楽しみたい。

山本博志


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