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人生万事塞翁が馬

近所の歯医者さんが、ちょっと変わっている。
治療時間より、先生が喋っている時間のほうが長いのだ。

初めて行ったとき、いきなりクイズを出された。
「世界の国旗の中で、表と裏のデザインが違うのはどこだ?」
みたいな問題だった。
ちなみに答えはサウジアラビア、パラグアイ、モルドバらしい。
衝撃的すぎてついうっかり覚えてしまった。
私、クイズを聞きに来たんじゃないのよ。歯の治療して。

長男が中学に合格したときは
「おめでとう。よくがんばったね。合格祝いをあげよう」
と色紙を渡してくださった。それには堂々とした文字で
「人生万事塞翁が馬」
と書いてあった。
ちょっと待て。
これはお祝いの言葉?
それとも、次は悪いことが起きるよっていう呪いの言葉?

次男が学校にいけなくなったときには、最近入ったばかりだというスタッフの女性Aさんとともに別室に呼ばれた。
「この人のお子さんもね、学校行けないのよ。しばらく2人でお話したら」
と先生はAさんと私を残して風のように去っていった。
ちょっと待て。いきなりそんなツッコんだ話、無理やがな。
Aさんも私も苦笑いするしかなかった。

「あの歯医者さんは、変わってるんだよ」
と子どもたちには説明しているが、
「でもあの歯医者さんにしか行ったことないから、俺らにとって歯医者さんってあの先生が標準なんよね~」
と言われた。
いやいや、あんたらも耳鼻科とか眼科とかのお医者さん見たらわかるやろ。
あんな医者、他におらんわ。

まあ、でも、近いし、あまりにも変だから、たぶんまたあの歯医者に行く。
あの歯医者さんに行ってる限り、次は普通のお医者さんに巡り会えるだろう。
人生万事塞翁が馬、だよね。

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