見出し画像

「こーばへ行こう!2023」見学レポート

東大阪市にはたくさんの町工場があるんです。11月にいくつもの工場が一斉にオープンファクトリーをするようですが、行きませんか?」
所属するオンラインコミュニティー「ライターゼミ」のメンバーが知らせてくれたのは、10月の初めのことでした。

東大阪市とは?

東大阪市は、日本でも有数の「モノづくりのまち」。5,500を超える事業所数は、政令指定都市を除き全国1位を誇ります。しかも、事業所がぎゅっと集積しているのが東大阪市の特徴で、右も左も町工場、とにかくモノづくりが身近だというのです。

私が住む備後地域も「モノづくり」の盛んなところです。東大阪はどんなモノづくりをしているのだろう。興味がムクムクと湧きました。

我が家の息子もモノづくりが大好きな職人タイプ。声を掛けると「行きたい!」との返事でした。

よし!東大阪のこーばへ行こう!
大阪だけではなく、関東や東北、広島に住むゼミのメンバーたち10人以上が東大阪に集まって、工場見学オフ会をすることになりました。

こーばへ行こう!2023

今回参加した、東大阪市のオープンファクトリーが「こーばへ行こう!2023」です。

11月10日(金)〜11日(土)に東エリア14社、11月17日(金)〜18日(土)には西エリア20社の計34社が参加する大規模イベント。
これほど多くの工場が参加していると、片っ端から全て回りたくても到底不可能です。

行く日は11月18日(土)に決まりましたが、結局、メンバーそれぞれ見たい工場が異なるため、それぞれがてんでに工場を回った後、みんなで集まることになりました。

どこに行くべきか何を見るべきか。
悩みに悩んで回ったうち、見学時にレポート掲載の許可をいただいた2社を紹介します。

株式会社アオキ

看板に注目!飛行機の形です!

最初に見学したのは株式会社アオキです。
2009年に打ち上げられた人工衛星「まいど1号」を作った会社のひとつだと知り、東大阪の町工場を知るにはまずこの会社だと思ったのです。

新大阪駅の乗り換えでもたつき、残念ながら開始時刻に遅れてしまいましたが、遅れて受付に到着した私たちを、アオキの社員さんたちは優しく案内してくださいました。

案内された部屋に入ると、20人ぐらいの見学者が青木 理(あおき おさむ)社長の話を聞いていました。
「ウチは世界一小さい、ボーイングの認定工場です」
なんと、ここであのボーイングの飛行機、B777やB787の胴体や翼の骨組みを作っているとは驚きです。
「ときどき査察に来られますが、工場が小さすぎてどれだけていねいに見てもらってもあっという間に終わってしまうんです」
東大阪の小さな町工場が、世界をつなぐ飛行機の機体を支えていました。

また、中小企業はSDGs向きだ、というお話が印象に残りました。
「大企業が行っているのは大量生産・大量消費、買い替えてもらうことが前提のモノづくりです。しかし、私たち中小企業が行うのは、一生モノのモノづくり。耐久性が10倍のモノを作るので、ゴミが大幅に減らせます。その代わり、市場は少ない。しかし、SDGsは中小企業の強みだと思っています」

コロナ禍で航空各社は大きな打撃を受けました。アオキにとってもその影響は大きかったそうです。
「航空機の生産は8割ダウンとなりました。その間、私たちも仕事がなくなり週休5日を余儀なくされました。

しかし、余った時間はチャンスです。環境社会に役立つモノと新たに取り組んだのが、除菌脱臭機の販売でした。
研究所の実証実験により、炭素化合物の分解効果が証明されています。花粉やウイルスを分解する効果が認められた商品です」
こうした柔軟な姿勢も、中小企業の強さなのだと思いました。

お話の後、実際に工場を見学しました。
工場の1階で行われているのは金属加工です。

金属の板に油をかけながらドリルで削って穴を開けています。ほんのわずかな誤差も許されない精密部品の製造には、技術力と注意力が必要です。

5軸マシニングセンタは、台座を前後左右上下に動かしながら、金属を切削加工する機械です。複雑な形状の金属を仕上げていく繊細な動きに目を見張りました。

工場内にはさまざまな機械があり、精密部品を作っています。しかし、部品表面の0.02mm以下の凸凹を見つけ、修正するのは職人の手です。

こうして出来上がった部品の美しいことといったら。

工場の3階では飛行機の床などに使われる、紙と樹脂の複合材を加工しています。蜂の巣のような小さな六角形が並んだ構造の複合材は、軽くしなやかでありながら、人が乗ってもびくともしない頑丈さを併せ持っています。
目の前で大きな材料を型の通りにカットし、面取りをし、樹脂を入れていく職人さんたちの美しい動作に見入ってしまいました。

模型の飛行機のプロペラの方向を変えたり動かしたりする体験に、子どもたちの歓声が上がります。

人工衛星や飛行機など、高い技術力を要求されるモノづくりに取り組んでいるアオキ。
青木社長が最後に言われた「今までになかったモノを作って、みんなに喜んでもらえるのがモノづくりの醍醐味」の言葉を噛み締めながら、次の工場へと向かいました。

▼バーチャル工場見学もできます。

株式会社たくみ工芸

キッチンカーやグッズ販売などもあり、賑やかでした

次に見学したのは、装飾金物や陳列金物などを製造する株式会社たくみ工芸
塗装体験や溶接体験もあるとの情報に、これはぜひ挑戦してみたいと訪れました。

はじめに案内されたのは金属の板を切断したり曲げたりする「板金部」です。
レーザーで金属を切断するレーザー加工機や、最大4mの材料を加工できるシャーリングなど、普段目にすることのない機械が並んでいました。

複雑な形状に切り出され、曲げられていった金属片は……。
よく知っているサッシの角部分の形になっていました。こうやって作るのかと、目からウロコです。

このような複雑な加工もお手の物

「金属加工は工作好きにとって究極の憧れ」と言っていた息子も、楽しそうに見学しています。

次は金属に焼付塗装を行う「塗装部」です。
カットの終わった金属を、油や汚れを落とすための装置に入れてキレイにした後、サビや傷がないかをチェックします。
それから塗料を吹き付けて、大きな窯に入れて焼き付けるのです。

塗料を帯電させて吹き付ける塗装法により、塗料は金属の底面や裏側にまで巻き付いていきます。

その後、巨大な窯に入れ、130~140℃の温度をかけて塗料を焼き付けます。

塗料は調色室で、サンプルの色に合わせて調合しているそうです。

続いて金属加工を行う「製作部」を見学しました。
ここでは機械を使って金属のパイプを切断したり、一部分を削ったり、溶接したりなどの作業をしています。

こんな複雑な形のモノも

一つひとつ、ていねいに作業が進んでいきます。

溶接をすると溶接部分が盛り上がってしまいますが、ファイバーレーザー溶接を使うと、溶接部分の盛り上がりが少なく変形も少ないそうです。
新しい技術が町工場のモノづくりに、どんどん取り入れられていました。

ちなみに私も溶接体験にも挑戦しましたが、ご覧の通り、大きな穴が開いてしまいました。溶接には熟練が必要だとよくわかりました。

▼たくみ工芸さんの商品についてはこちら

おわりに

初めて歩いた東大阪のまち。道の両側に工場がずらりと並ぶ光景を見て、確かにここはモノづくりのまちだと実感しました。
これだけの町工場が集まっているからこそ、技術力が磨かれ、新しいモノ、よりよいモノが生み出されてきたのでしょう。
モノを作ることは人をつなぎ未来を作ることだと感じます。

ライターゼミのメンバーが集まった後は、それぞれが回った工場の写真やワークショップで作ったモノを見せあったり、見てきたものを伝え合ったり。
町工場の魅力をみなが口々に語り合い、その魅力を伝えるお手伝いができるようになりたいよね、と話が弾みました。
充実した一日でした。

私のカメラバッグには、見学記念にいただいた缶バッジが光っています

この記事は、ライターゼミ・アドベントカレンダーに参加しています。
ライターゼミに興味を持たれた方は、こちらをご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?