弁理士試験では散々対策したのに、実務ではめったに登場しない論点【特許法編】
試験でよく出るのに、仕事でほとんど扱わない知財の論点がある
弁理士試験では基本的に、実際の仕事を想定した問題が出題されます。
条文を基に書類を提出したり、「この商標はこういう問題があるから出願を勧めない方がいい」と判断したりします。
一方で、試験で頻出の論点なのに、実務では登場しないものもあります。
「散々対策したのに、全然使わないなあ」と私が思う特許法の論点の中から、3つ選んでみました。
実務であまり登場しない論点1・補償金請求権
補償金請求権は、特許出願が登録されるまでの間に、第三者が勝手に出願の中の発明を実施した場合に、活用できる制度です。
制度ができた理由を聞かれた時に答える、「出願人の損失を填補(てんぽ)する」というキーワードは何度も音読して覚えました。
また、請求できる条件は「特許出願が出願公開されている」「発明の内容を提示して警告する」などと細かいです。
請求できる時期は、特許出願が設定登録された後です。
実務で登場しない理由は、まだ登録になると分かっていない時期に「この発明を実施するな」と警告するのは、非常にリスクがあるからです。
実務であまり登場しない論点2・特許権の存続期間延長出願
特許権は、出願から20年で満了します。
存続期間延長出願は、例外的に5年まで延長できる制度です。
特許出願の審査が一定期間以上遅延した場合、又は医薬品や農薬の発明について、薬機法や農薬取締法の承認が遅延した場合に、延長することができます。
「特許期間が侵食される」という、不思議な響きのキーワードを覚えました。
実務で登場しない理由は、特許出願の審査が遅延することはあまりないことと、医薬品や農薬の分野の発明のみに限られることが考えられます。
実務であまり登場しない論点3・間接侵害
第三者が勝手に特許発明を実施することを、特許権の侵害といいます。
侵害には、直接侵害と間接侵害があります。
直接侵害は、特許発明そのものを実施することです。
間接侵害は、特許発明の実施に使われる専用の部品を製造したり流通させたりするなどの行為です。
間接侵害も侵害の範囲である理由を聞かれた時に答えるキーワードは、「直接侵害を惹起(じゃっき)する蓋然性(がいぜんせい)が高い侵害の予備的又は幇助的(ほうじょてき)行為」です。
「惹」「蓋」「幇」といった難しい漢字は、正しく書けるように練習しました。
また、専用の部品(のみ品)の定義も暗記しました。
実務で登場しない理由は、その部品が特許発明の実施に使われる専用の部品なのか、定義があっても実際は判断が難しいからと考えられます。
まとめ
特許法での、試験での出題頻度と実務で扱う頻度にギャップのある論点を紹介しました。
とはいえ、実務で使わない論点でも、学んで無駄にはなりません。
たくさんの論点を知ることで、法律全体を理解できるからです。
今後も、忘れないように条文やテキストに目を通したいです。